ここが変です日本の糖尿病治療:その4「欧米のガイドラインは目標HbA1cに上限がない。個々の状態に合わせて設定して良いことになってます。」

欧米のガイドラインではHbA1cの数値に関しては「おおむね7.0%もしくは8.0%もしくはそれ以上」となっていて実質上限がないことになります。

ここで勘違いしてもらうと困るのは「誰でも高くて構わない」とは言っていないことに注意が必要です。以前も紹介した様に糖尿病はランセット投稿者は少なくとも「500」ぐらいに分類できると考察されてます。みんな同じ目標では弊害が生じそうですよね。私の経験も交えて説明します。

1そこそこ食事の管理とそこそこの治療薬で7.0%未満になる人

このタイプの患者さんは糖尿病全体に対する割合も多く、はじめから「合併症も少ない」タイプと考えます。医師からすると「あまり苦労しなくても治療が可能ですし、定期的に受診さえしていれば問題にならないタイプ」なのです。

2普通に治療していくと低血糖などを含めて調子が悪くなってしまい8.0%もしくはそれ以上になる人

このタイプの患者さんは糖尿病全体に対する対する割合は低いのですが、治療の途中で薬を追加したり、増量すると調子が悪くなったりします。中にはインスリンで治療してHbA1cが10%以上でも低血糖になってしまう患者さんも含まれています。研修医の頃、上の先生に言われて「全員の血糖値を同じ様」に下げた時期がありました。その時期治療した患者さんの一部は「低血糖」を生じるぐらい血糖値を下げましたが「合併症」は進む一方でした。研修医後期にはあまりにも患者さんが具合悪がるため、患者さんが具合悪くならない様に(HbA1cで13%ぐらいのままの患者さんもいました)治療法を変更してみました。なんと結果は「具合悪くない」治療法の方が合併症が少なくなりました。全体に対する割合は少ないのですがこのタイプの患者さんを日本のガイドライン通りに治療すると私の経験では「合併症を含めて悪くなる」という感覚です。つまり欧米のガイドラインはこういうタイプの患者さんを含めたものにきちんとなっているのです。500種類もある糖尿病のタイプの中には、はじめから「合併症になりやすい」タイプが含まれていて、そういう患者さんは「調子が悪くならないところまで」しか血糖値を下げられないものと考えます。以前にも書きましたが、血糖値を「絶対値」と捉えるのではなく「タイプ」によって「その人に適正な血糖値が違う」と認識した方が良いということです。

誤解のない様に書きますがこれは「だから甘いものを食べても良い」と言っている訳ではなく、「だからいい加減に治療しても良い」と言っている訳ではありません。「治療はきちんと行うが、使う薬の量が多すぎてはいけない」ということです。これはほとんど「医師」に対しての啓蒙が必要であるということです。もしこの記事を読まれた方が患者さんで主治医との関係が良い人はこの記事を読んでもらっても構いません。納得がいかない医師がいれば同サイト内(私流「糖尿病学」:有料ですが)を主治医の先生が自分で購読して頂ければ納得してくれるかも知れません。低血糖を生じない様に心がけるのは「医師」の「意識改革」にかかっているのです。くれぐれもHbA1cが高いからといって、「過剰な薬」で低血糖にならない様に気をつけて治療を継続して下さい。

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