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『スーパースターを唄って。』を読んだ

久しぶりに一気読みをした。
走ったあとくらいに鼓動が早くなって、頭が痛くなった。
たったの4巻。90分くらい。

主人公である雪人の家庭環境や貧困や暴力の世界は、想像はできるけれど、理解が追いつかなくて遠い世界の話のよう。
ぼくには、なにがなんでも抜け出したいような現実はなくて、ありがたいことに温い人生を歩んできたと思う。

雪人は、「痛み」という生い立ちから生まれるリリックがとてつもなく大きな武器となる。

そしてその「痛み」の奥にあるのは「失った愛」だと思う。

覚醒剤中毒者の母親だったり、貧困に付け込んだ反社会的な人物だったり、目を覆いたくなるような現実や悪がある。
しかしそんな現実から、雪人だけは守ろうとする姉の桜子の強くて大きな愛。
そんな愛を失って生まれた痛み。
その痛みを原液として、薄まることなく、生々しく吐き出される感情がリリックとして描かれたときに、聴こえてくるはずのない音楽が流れてくるような気がして胸がえぐられる。

たくさん受け取った愛と、それを失った痛みと、それでも前を向いて進んでいくという信念とひたむきさ。
まったく重ならない境遇だけれど、書きたいこと、伝えたいことは同じかもしれない、と思いながらページを捲っていた。

リリーの話も良いし、オッサンもいい。

たぶんあと何周か、時間をかけながら読むんだろうな。

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