やったことない事をやってみよう。その2【日本で一番高い建物に登ってみる】
2019年8月18日朝8時。空には薄靄が立ち、これから暑くなるだろうという雰囲気を醸し出していた。「とうきょうスカイツリー」駅は人も疎らで、絶好の一人観光日和だった。「やったことない事をやる」と意気込んではいるが、思ったよりもやったことない事には時間と金銭がかかる事に今更気づいた。余裕がないわけではないが、勇気が足りなかった。ならばまずは手軽なやったことない事からやってみようと思い、ソラカラちゃんを愛でに行った。
スカイツリーに登る計画は金曜日に立てた。セブンイレブンで前売り券を買った。天望デッキ+天望回廊で3,000円だった。大人1枚でコピー機から出力し、レジへ持っていった。「あ、他の人はもう買ってて私だけ急遽セブンで買ってんすよ」という顔をして買った。店員は顔を見なかった。人が多いと何だかいたたまれなくなりそうだったので、08:00~08:59入場指定にした。
東京スカイツリーは開業から7年も経つ。ソラマチにはたまに行った事はあるが、展望台には入ったことがなかった。そもそもそんなに興味がなかったのと、3,000円も払ってなんで高いところ登らなあかんねんという謎の斜に構え精神が縺れに縺れ、本日に至った。
朝8時10分。前売り専用入場口へ向かう。観光客はまばらだが、ちらほらと居た。家族連れ、カップル、海外の方、ヤンキーの集団、と、先日の神社と客層は変わらなかった。前売り券をドヤ顔で係の方に渡し入場券を受け取る。複数の警備員に睨まれながら荷物検査をドヤ顔で通過し、エレベーター搭乗口へ到着した。エレベーターは4台あり、「春夏秋冬」が割り振られていた。乗ったのは秋だった。分速600mで上がり、約50秒で到着しますとの説明があった。エレベーターが開くと集団にわいのわいのと、追い立てられ、何故か私はエレベーターの中心に居た。周りは家族連れ、カップル、海外の方。ヤンキーの集団は居なかったが、凄くいたたまれなかった。まるで会社で社長とエレベーターで同席してしまった時のように、私は虚空を見つめ無に徹した。「すごーい」「耳が痛ーい」という周りの声は虚空に吸い込まれていった。
地上350mからの景色は圧巻だった。眼下に広がる1つ1つの建物が全てジオラマの様だった。息遣いは聞こえず、全てが無機質に感じた。ぱぱっと東西南北を見て、カフェでアイスコーヒーを飲んだ。地上350mで飲むアイスコーヒーは格別でもなかった。普通だった。慣れというものは恐ろしい。滞在して10分で「飽きたな」と感じてしまったので、地上450mへ足早に向かった。
地上450mは地上350mと大して変わりがなかった。しいて言えば人がより少なく、暑かった。温室のようだった。スヌーピーの何かが行われていたが、興味がなかったのでスルーし、足早に下りのエレベーターに乗り、350mへ戻った。
下りのエレベーターは冬だった。乗客は私しかおらず、図らずも貸し切り状態であった。これがとても嬉しかった。機内の写真は撮り放題だった。こんな機会めったにないと思うので、かなりの収穫だったと思う。「私スカイツリーのエレベーター貸し切りで乗ったんですよ」はドヤ顔な話題になるのではないだろうか。「1人だったんですか?」というカウンターワードには要注意だ。お察しくださいへへへみたいな顔をすれば何とかなるだろう。
ここまで書いてはみたもののスカイツリー全体の滞在時間は約40分。8時にソラカラちゃんを愛で、40分後にはまたソラカラちゃんを愛でていた。
一体私は何しに来たんだという感じではあったが、充実はしていた。分速600mのエレベーターに乗り地上350mでアイスコーヒーを飲み、450mを駆け足で回ったという経験はきっとこの先どこかで何かの役に立つはずである。「貸し切りだったんすよへへへ」とドヤ顔も出来るし。きっと何かの役に立つだろう。「もういいかな」の気持ちはそっと胸の奥底にしまっておこう。
ちなみにかの有名な金メダリストのウサイン・ボルトのトップスピードは分速743mらしい。エレベーターより早いとか凄いなウサイン・ボルト!
やったことない事をやる人間です