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【観音霊験記 秩父巡礼】第十八番神門山修験長生院/巫女の神託

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 秩父巡礼十八番神門山修験長生院 巫女の神託

観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 十八番 神門山かうどさん修験しゆげん長生院ちやうせいいん
 たゞたのめ 六ぞくともに 大をば
   神門かうどにたちて たすけ玉へる

奉額
   稲妻いなづまや 人といふを 水にかく

巫女みこ神託しんたく
當寺とうじは、往昔むかし神社じんじやにて、大なるさかき左右さいうよりそらえだをつらねて、あたか樓門ろうもんのごとくなりしかば、神門かうどといひしが、そのやしろ退轉たいてんしてあとなくなりしを、後年こうねんところおさ 里人さとびとあつめて再建さいこんだんじけるゆへ、まづ神楽かぐらそうしけるに、

巫女みこうつりて神託しんたくありけるには、「このかならず神社じんじやたえることなく、梵刹ぼんせつたてるときは、ながさかへん」とつげあるによつて、観音くわんおん灵場れいぢやうとなせしかば、つげのごとくいまにいたつて利生りしやうあらたか也。

※ 「梵刹ぼんせつ」は、仏語。仏寺のこと。
※ 「利生りしやう」は、仏語。仏菩薩が衆生を救うこと。

それ かみほとけ水波すいはのへだちにて、両部りやうぶ内證ないしやう一致いつちにて、慈悲じひ深長しんぢうちかなにをかわかたん。しかれば、かみうやまふものは、かならず  ほとけしんじて利益りやくかうむるべきもの也。

※「水波すいはのへだち」は、水波すいはへだち。水と波が分けがたいように、名は違っていても本体は同じであることの喩え。水波すいはへだて。
※ 「両部りやうぶ」は、仏語。密教における二大法門、金剛界こんごうかい胎蔵界たいぞうかいのこと。両界。
※ 「内證ないしやう」は、仏語。自分の心のうちに真理を悟ること。内証ないしょう



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