【観音霊験記 秩父巡礼】第二十番岩の上別当内田定金/寺尾村の孝子 2 mominaina 2024年11月6日 16:10 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼二十番岩の上別当内田定金 寺尾村の孝女』観音霊験記 秩父順禮 二十番 岩の上別當 内田定金 苔むしろ 敷てもとまれ 岩のうへ 玉の下も 朽はてる身を 小男鹿も 月に寝にこよ 岩の上寺尾村てらをむらの孝子かうし當山たうざんは白河院しらかはいんの御建立ごこんりうにして、遥はるか下しもに荒あら川の水、藍あいのごとく渦うづまきてながれ、絶頂ぜつてうは峨々がゝとして、その風景ふうけい言葉ことばに尽つくしがたし。灵驗れいげんの多おほきなかに、此この 寺尾村の者、老おいたる母はゝを川むかひの宮路みやぢといふ所ところにおきて、朝あさ夕ゆふに見みまひけるに、或ある時ときふと病やまひのよしを告つげ来れば、急いそぎ行ゆかんと、この麓ふもとの淵ふちに来りしところ、折をりしも大雨うなかばにて、俄にはかに水まして、歩行かちわたりすること叶かなはず。とやせん角かくやせんと、心こゝろあせるうち、水は弥いや増まさりするばかりなれば、仮たとへ 今 命いのちを捨すつるまでも、母はゝの安否あんぴを知しらずにやはと、既すでに渡わたらんとする所ところへ、見馴なれざる童子わらべ 舟ふねに棹さほさして「是これに乗のれ」といへば、夢ゆめのごとくに悦よろこびて、岸きしに上あがり、「御身みは何處いづこの者」と聞きけば、「我はあの岩いはの上の者也。汝なんぢが孝心かうしんを憐あはれみて渡わたす也。母も兼かねて我われを信しんず。疾とく々ゆけ」といふ。したに舟は失うせて跡あとなければ、扨さては観音にましませしかと、岩の上をふしをがみて、急いそぎ母に見まみへし所、最早もはや悩なやみも癒いへければ、しか/\と物語ものがたれば、ともに利益りやくを信仰かうして、一生しやう供養くやうをもなしけるとぞ。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #白河天皇 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #白河院 #岩之上堂 #内田定金 #寺尾村 2