
【観音霊験記 秩父巡礼】第五番小川山語歌寺/本間孫八

『観音霊験記 秩父巡礼第五番小川山語歌寺 本間孫八』

観音霊験記 秩父順禮 第五番 小川山語歌寺
父母の めぐみもふかき 語歌の堂
大慈大悲の 誓ひたのもし
奉額
慈悲の眼に 捨る草なし 露の秋

本間孫八
當寺の大檀那孫八は、其家富貴なれども、かゝる邊鄙に生れて、和歌の道を知らざれば、これを深く悲しみて此堂に通夜をし、和歌の道を祈りければふしぎと旅僧来りて共に通夜をし、終夜、歌の奥儀を語り、又、片岡山の化人の歌を講じなぞして、暁にはかき消すやうに失けるゆへ、孫八、旅僧は救世大士の應化なることを知つて、則、語歌堂と名づけぬ。
※ 「通夜」は、ここでは夜通し、一晩中の意。
※ 「救世大士」は、観音菩薩のこと。
※ 「應化」は、仏語。菩薩が世の人を救うために、相手の性質や力量に応じて姿を変えて現れること。応化。

また、信濃国の綿づみの老女、娘を魔鳥に捕はれて、心狂ひながら此本尊を祈りければ、二十八部衆に命じて 取反しあたへ玉ふがゆへ、俗に子反の観音ともいへり。
※ 「二十八部衆」は、千手観音の眷属の二十八の善神のこと。

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