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百鬼夜行拾遺 雲
蜃気楼(しんきろう)
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蜃気楼
史記の天官書にいはく、海旁蜃気は楼台に 象 ると云々。蜃とは 大蛤 なり。海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす。これを蜃気楼と名づく。又、海市とも云。
燭陰(しよくいん)
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燭陰
山海経に 曰 、 鍾山 の神を 燭陰 といふ。身のたけ千里、そのかたち人面、龍身 にして、赤色 なりと。鍾山は北海の地なり。
人面樹(にんめんぢゆ)
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人面樹
山谷にあり。その花、人の首のごとし。ものいはずして、たゞ笑ふ事しきりなり。しきりにわらへば、そのまゝ 落花 すといふ。
人魚(にんぎよ)
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人魚
建木の西にあり。人面にして魚身。足なし。胸より上は人にして、下は魚に似たり。是、氐人国の人なりとも云。
返魂香(へんごんかう)
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返魂香
漢武帝 李夫人 を寵愛し給ひしに、夫人みまがり給ひしかば、思念してやまず。方士に命じて返魂香をたかしむ。夫人のすがた、●●として、烟 の中にああらはる。武帝ますますかなしみ、詩をつくり給ふ。
是那非那立而望之
偏娜々何冉々 其来遅
彭侯(はうこう)
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彭侯
千歳の木には 精あり。状 、黒狗のごとし。尾なし。面、人に似たり。又、山彦とは別なり。
天狗礫(てんぐつぶて)
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天狗礫
凡 深山幽谷 の中にて、一陣の魔風 おこり、山鳴、谷こたへて、大石をとばす事あり。是を 天狗礫 と云。左伝にみへたる 宋 におつる 七つの石もうたがふらくは、是ならんかし。
道成寺鐘(どうせうじのかね)
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道成寺鐘
真那古の庄司が娘、道成寺にいたり、安珍がつり鐘の中にかくれ居たるをしりて、蛇となり その鐘をはふ。この鐘とけて 湯となるといふ。 或 曰 、道成寺のかねは、今 京都 妙満寺にあり。その銘、左のごとし。
紀州日高郡矢田庄
文武天皇勅願所道成寺冶鐘
勧進比丘別当法眼定秀檀那
源万寿丸弁吉田源頼秀合山
諸檀越男女大工山願道願小
工大夫守長延暦十四年乙亥
三月十一日
燈臺鬼(とうだひき)
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燈臺鬼
軽大臣 遣唐使 たりし時、唐人大臣に 啞 になる 薬 をのませ、身を彩り、頭に 燈臺 をいたゞかしめて、燈臺鬼 と名づく。その子、弼宰相 入唐して、父をたづぬ。燈臺鬼、涙をながし、指をかみ切り、血を以て、詩を書して 曰
我元日本華京客 汝是一家同姓人
為子為爺前世契 隔山隔海変生辛
経年流涙逢嵩宿 逐日馳思蘭菊親
形破他郷作燈鬼 爭皈旧里寄斯身
泥田坊(どろたばう)
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泥田坊
むかし、北国に 翁 あり。子孫のためにいさゝかの田地をかひ置て、寒暑風雨をさけず、時々の耕作 おこたらざりしに、この翁 死してより、その子 酒にふけりて、農業を事とせず。はてには、この田地を 他人にうりあたへければ、夜な夜な 目の一つあるくろきものいでゝ、田かへせ 田かへせ とのゝしりけり。これを 泥田坊 といふとぞ。
古庫裏婆(こくりばゝ)
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古庫裏婆
僧の妻を梵嫂といへるよし、輟耕録に見えたり。ある山寺に、七代以前の 住持 の愛せし梵嫂 その寺の庫裡にすみゐて、檀越 の 米銭 をかすめ、新死の 屍 の皮をはぎて、餌食と としとぞ。三途河の 奪衣婆 よりもおそろしく。
白粉婆(おしろいばゝ)
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白粉婆
紅おしろいの神を 脂粉仙娘 と云。おしろいばゝは、此神の 侍女 なるべし。おそろしきもの。しはすの 月夜 女のけはひ、とむかしよりいへり。
蛇骨婆(じやこつばゝ)
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蛇骨婆
もろこし 巫咸国 は女丑の北にあり。右の手に 青蛇 をとり、左の手に 赤蛇 をとる人 すめるとぞ。 蛇骨婆 は、此国の人か、或説に云、蛇塚 の 蛇 五右衛門いといへるものゝ妻なり。よりて 蛇五婆 とよびしを 訛 りて 蛇骨婆 といふと。未詳。
影女(かげおんな)
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影女
ものゝけある家には、月かげに 女のかげ 障子 などにうつると云。荘子にも 魍魎 を景と 問答せし事あり。景は人のかげそ 魍魎は景のそばにある 微陰 なり。
倩兮女(けらけらおんな)
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倩兮女
楚の国 宋玉 が 東隣 に 美女 あり。墻にのぼりて、宋玉ををうかゞふ。嫣然として、一たび笑へば、陽城 の人を惑せしとぞ。およそ 美色の人情 ●●● す事、古今に ●●● 多し。けらけら女 朱●を ●がへして多くの人をまどはせし ●婦の㚑な ● ん ● 。
煙々羅(えんえんら)
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煙々羅
しづか家のいふせき 蚊遣の煙むすぼ ● れて、あ ●●● かたちを ●●● ま ● に、羅の風にやぶれやすき ごとくなる すがたなれば、煙々羅とは、名つけたらん。
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筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖