江戸高名会亭尽 王子
狂句合
扇屋へ 馴染になつた 三の午
女性たちが水遊びをするのは石神井川の下流域、音無川です。
王子稲荷社や王子権現(現在の王子神社)がある高台と飛鳥山との間を流れ、滝野川、王子川とも呼ばれていました。現在の音無親水公園(東京都北区)の辺りです。
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歌川広重の『名所江戸百景』にも描かれる江戸の観光名所でした。
王子街道沿いということもあって、大勢の人がこの川沿いを往来し、料理屋が軒を並べました。なかでも有名だったのが「海老屋」と、『江戸高名会亭尽 王子』の狂句に詠まれる「扇屋」です。
「 扇屋へ 馴染になつた 三の午 」
「三の午」というのは、二月の3回目の午の日のことです。
王子稲荷社では、毎年二月に「初午祭」「二ノ午祭」と呼ばれる祭礼が行われていて、年によっては「三ノ午祭」があります。
例えば、今年(令和五年)の場合は、初午が2月5日、二の午が2月17日です。三の午があるのは、直近では令和八年(2026年)、初午が2月1日、二の午が2月13日、三の午が2月25日になります。
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「馴染になつた三の午」は、初午祭、二ノ午祭、三ノ午祭の参詣ごとに扇屋に立ち寄れば、店構えが大きく大勢の客で賑わう扇屋でも、顔を覚えてもらえたということなのでしょうね。
参考:国立国会図書館デジタルコレクション『三府名所独案内図会1東京之部』『東京名勝図会2版』『道中記:附・東京四日廻』『王子稲荷初午祭ノ図』『江戸買物独案内(海老屋)』
筆者注 新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖