【大阪】川口の真景

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『川口の真景（浪花百景之内）』

土佐堀とさぼり川、堂島川、蜆しゞみ川の三流合がつし、此所に分●ぶんのうして、一は西へあじ川に落、一は南へ木津川に落る。此図は、木津川の分れ口にて、船御番所ざとして、ちうや出船入船を改めたたまふ。

此ほとり●すべて、景色けいしよく絶妙ぜつみやうにして雨中うちう雪せつ中はいふも更さらなり、ことに月夜は老欝おううつたる古松水上に影をひたし、ざこばに通ふ漁船の棹歌さほうた揖取かんどりのこえ、川風にさんじて閑静かんせいなることいはんかたなし。

※ 「あじ川」は、安治川。
※ 「老欝おううつ」は、蓊鬱。草木が盛んに茂る様子。
※ 「ざこば」は、雑魚場。近世、大坂の魚市場のこと。
※ 「棹歌さおうた」は、船頭が棹で舟を進めながら歌う舟歌。
※ 「揖取かんどり」は、船頭のこと。

此図は木津川の分れ口にて
船御番所ざとしてちうや出船入船を改めたたまふ

ざこばに通ふ漁船の棹歌揖取のこえ
川風にさんじて閑静なることいはんかたなし

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