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【古今名婦伝】下女お初

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『下女お初(古今名婦伝)』

下女お初

初女は〔本名さつ〕何某殿なにがしのとのおく中老ちうらう尾上をのへみづしめなり。節婦せつふのきこえたか女主あるじ尾上は、傍輩はうばいなるつぼね岩藤いはふじはづかしめうけて 自殺じさつす。さつは、ひそかにこれをうかがひて、しゆうあだをうつ。たゞちにその殿とのうつたふるに褒詞ほうしを給はり、なほまた亡主ぼうしゆ尾上をのへあとつがせしむるとかや。

  ちいさきを 花のゆかりや 初茄子

※ 「みづしめ」は、水仕女みずしめ。台所で水仕事をする下女のこと。


下女お初 本名さつ

はつは、浄瑠璃・歌舞伎の演目(『加賀見山旧錦絵かがみやまこきょうのにしきえ』『鏡山旧錦絵かがみやまこきょうのにしきえ』『鏡山物』の登場人物で、江戸時代中期に加賀藩前田家で起きたお家騒動「加賀騒動」と、松平周防守すおうのかみ(松平康豊やすとよ)の江戸邸で起こった事件が題材になっています。

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『古今名婦伝』の説明に沿って、ストーリーを追ってみましょう。(内容を『絵本〔3〕加賀見山尾上岩藤』から補足します)

初女は〔本名さつ〕何某殿なにがしのとのおく中老ちうらう尾上をのへみづしめなり。

はつは、下女として中老の尾上おのえに仕えています。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『絵本〔3〕加賀見山尾上岩藤

節婦せつふのきこえたか女主あるじ尾上は、傍輩はうばいなるつぼね岩藤いはふじはづかしめうけて 自殺じさつす。

尾上には、岩藤という目上のつぼねがいて、岩藤はことあるごとに尾上に辛くあたりました。ある時、岩藤に強く叱責された上に 草履で頭を打たれた尾上は、その屈辱に耐えかねて自害します。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『絵本〔3〕加賀見山尾上岩藤

さつは、ひそかにこれをうかがひて、しゆうあだをうつ。たゞちにその殿とのうつたふるに褒詞ほうしを給はり、なほまた亡主ぼうしゆ尾上をのへあとつがせしむるとかや。

初は、あるじかたきである岩藤を討ち、その恨みをはらしました。そして自身も自害しようとしますが、岩藤がお家乗っ取りを企てていたことが明るみに出て、初は お殿様からその働きを褒められ、二代目尾上として中老を務めることと相成りました。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『絵本〔3〕加賀見山尾上岩藤

江戸時代、初の忠義話である『加賀見山旧錦絵かがみやまこきょうのにしきえ』の七段目は、諸家の奥女中が宿やどがりをする三月に必ず演じられる題目であったそうです。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『絵本〔3〕加賀見山尾上岩藤
二代目尾上(お初)

ちいさきを 花のゆかりや 初茄子なすび



参考:国立国会図書館デジタルコレクション『義太夫調査書 訂補再版(鏡山舊錦絵)』『影芝居鸚鵡人真似:各座俳優(局岩藤 下女お初)』『忠孝大和錦:美久仁の誉(忠婢お初)』『浄瑠璃歌舞妓脚色実録(加賀見山の実録)』『尾上召仕お初(当盛見立三十六花撰)
メトロポリタン美術館『The Actor Onoe Matsusuke in the Role of Lady Iwafuji
Wikipedia「加々見山旧錦絵」「鏡山旧錦絵」「鏡山物」「加賀騒動

筆者注 新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖