大坂北浜米市
大坂北浜米市
正米市あり、帳合米市有。正米市とは、現米の売買なり。帳合米とは、通用米にて差引して利損をはかる也。帳合米は、加賀二百俵以●所三百俵を 一商 と定む。又、虎市といふあり。是は、二十石づゝの売買也。やりくり両替屋、五十軒あり。帳合米を引請て、高下の直段を差引する也。虎市には、別に取引場と云もの一ケ処有て、こゝにてけし合すなり。
米市のことは、米穀売買出世車と云書にくはしく見えたれば、爰には略す。やりくり両替の手代、小者、毎夜よひの間に諸方をまはりてすめ合に行也。爰に顕す処の絵これ也。
※ 国立国会図書館デジタルコレクションの目次では「大坂小濱米市」とありますが、ここでは「大坂北濱米市」と読みました。
※ 「北浜米市」は、淀屋橋南詰の淀屋の門前(北浜)で開かれていたもので、後に、元禄十年(1697年)に堂島新地に移転し、堂島米市場と呼ばれるようになります。
※ 「正米市」は、米の現物取引のこと。
※ 「帳合米市」は、米の先物取引のひとつ。
※ 「虎市」は、米の先物取引のひとつ。帳合米より小規模な取引を対象としていたようです。
※ 「直段」は、値段のこと。
※ 「米穀売買出世車」は、寛延元年(1748年)に刊行された書。著者は赤松閣思望、千草屋新右衛門。
※ 「爰」は、ここ。
※ 「小者」は、丁稚のこと。
丁稚たちは、屋号が書かれた提灯を手に、筆を髷にさして、忙しく諸方を回り歩きます。
両替屋の前には、鰻の蒲焼きを売る茶船がでています。舟の上ではまだ丁稚と思われる髪型の男の子が、片膝をたてて蒲焼きを肴に酒を飲んでいるようです。鰻の匂いにつられてかけよる男の姿が楽しいですね。
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筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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