【観音霊験記 秩父巡礼】第四番荒木/荒木丹下 5 mominaina 2024年6月30日 14:10 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼第四番荒木 荒木丹下』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 第だい四番 荒木あらきあらたかに まへりてをがむ くわん世音ぜおん 二世にせ安楽あんらくと 誰たれも祈いのらん奉額 やがて咲さく 花はなぬくめんと 落葉おちばかな荒木あらき丹下たんげ此この所ところに住すむ 荒木あらき丹下たんげといふ者ものは、慳貪けんどん邪知じやち因果いんぐわの道理どうりを知しらねば、𩻄寡くわんくわ孤獨こどくを恵めぐまず、たゞ惡行あくぎやうをのみ業わざとせしが、※ 「慳貪けんどん」は、けちで欲深いこと。※ 「邪知じやち」は、悪知恵のこと。※ 「𩻄寡くわんくわ」は、𩻄は男やもめ、寡はやもめの意。一時あるとき、一人ひとりの順礼じゆんれい門前もんぜんに彳たゝずみて手てのうちを乞こひければ、「姦かしましや、予わが 晝寢らくねを妨さまたげし。いで、手てのうちを報謝ほうしやせん」と立出たちいで、巡礼じゆんれいの柄杓ひしやくを奪うばひ取とつて「吾わが手てのうちは是これこふぞ」と打擲うちたゝけど、巡礼じゆんれいはいかるいろもなく「施ほどこしなくば言葉ことばにても済すむべきに、手てにも足たちざる者ものをかく打擲うちたゝくとは情なさけなし」といふに、丹下たんげいよ/\怒いかりて「そも我國わがくには神國しんこくにて、一粒いちりうの米こめだに神かみの宝たからなるを佛徒ぶつとの者ものにあに施ほどこさんや。とく/\立たち去され」と攻せむれば、※ 「手てのうち」は、ここでは乞食や托鉢僧などに与える金銭や米のこと。※ 「姦かしまし」は、やかましいの意。かしまし、かしかまし。※ 「晝寢らくね」は、昼寝。※ 「いかるいろもなく」は、怒る色もなく。正まさなきことを言のたまへる人ひとは、「神かみの性みたまものなれば、吾われもそのうちなるを、左程さほど神かみを尊たうとむもの吾われを打擲ちやうしやくするいはれなし。天子てんしは民たみの父母ふぼには有あらずや。施ほどこしうけざれば、我われ 飢死うへじにせん。佛ほとけは自他じた平等べうどう」と説とき給へりと言いふ。夫それよりいち/\利りを詰つめければ、丹下たんげ一言いちごんもなく、発起ほつきして、此この観世音くわんぜおんを深ふかく信しんじて大だい善人ぜんにんとなりたるは不思議ふしぎの㚑験れいげんなり。※ 「㚑験れいげん」は、霊験。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #秩父巡礼 #金昌寺 #荒木丹下 5