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『料理綱目調味抄』(8) 組焼物の部

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

くみ焼物の部

組焼者

魚鳥 二種三種、或、菜類、海苔のり、炙物の類、取合、何種に 不  か●●。見合たるべし。

東国にて結溝けつかうといふには、焼物の外に、何種も盆に盛て出す。盆盛ぼんもりといふ。美饌びせん を結溝と云。是にや。

※ 「結溝けつかう」は、結構けっこうでしょうか。
※ 「美饌びせん」は、みごとな料理のこと。

小書

塩焼、漿付焼、皷付焼、青●、板焼、くし焼。田楽等、要 註 之。

※ 「漿」は、醤油のこと。
※ 「皷」は、味噌のこと。

焼炙

差別して、要 載 之。


  組焼  鳥の部

雉子きじ

焼鳥の第一とす。故實こじつ、奥にしるす。

雲雀ひばり

賞翫のもの也。漿付焼、あをくし焼にも。皷漬もよし。うばしぎ、ぼとしぎ、ひゑどり、むく、つぐみ、すゞめ、はと、いづれもおなじ。子細なし ●● 略 之。

※ 「賞翫」は、味のよさを楽しむこと、賞味すること。しょうがん。
※ 「うばしぎ」は、姥鴫おばしぎの別名。
※ 「ぼとしぎ」は、ぼとしぎ山鴫やましぎの別名。
※ 「ひゑどり」は、ひよどりの別名。ひえどり。

うづら 并 しぎ

四季ともに賞翫なり。漿付焼、漿にうす葛を引けば、鳥かはかずしてよし。皷漬もよし。焼かけん第一也。

※ 「焼かけん」は、焼き加減。

がん かも

板焼はうすく大平に造り、漿にひたし、板の上にのせ焼。いたともに引もよし。さぎ、ばん、にはとりの類、皆身を小串こぐしにしてよし。

※ 「ばん」は、ばん


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

  組焼  魚の部

小串、漿しやうゆか塩焼。打付焼は、うす平に切、塩ふり、其まゝ焼、杉の板焼。小鯛は、生・塩ともに、片身ばかりともよし。皷漬もよし。

さけ ます

塩焼、漿付焼、小串にも。なま・塩ともによし。うすく ● 塩するを、さすり塩といふ。

※ 「なま、塩ともによし」は、「なま」は生鮭、「塩」は塩鮭。

かつほ

塩焼、漿付焼。塩かつほそのまゝ焼。

いしかれい塩焼、漿いりにも。

夏日、ひらき、うすく塩して、干かはかして、片身斗にても、組合によし。東武の中ふくらむよし。塩焼。

筒に切、漿付焼。身とりて、小くしにも。

※ 「鯧」は、まながつお。
※ 「小くし」は、小串。

玉餘魚きすご

塩焼、漿付焼。くみ焼には、骨抜ほねぬきよし。骨ぬき様、細き小刀にて、首の下の大骨と尾の上の大骨を切たち、ゑらの所より小刀をさしこみ、肉とほねを話し、大骨を抜とる。全躰にして骨なくしてよし。

黄□魚あまだい

大なるは切目、漿付焼。なま・干なるを焼て、組合によし。


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

ゑい

小串、皷、漿付焼。田楽にして一色もよし。すみそ。

蒲梃かまぼこ

竹に巻たかたちを名とせり。近代、杉板よし。魚ははむよし。勢州より東、はむなき所は、鯛、かれい、あまだい、藻魚もうを等の諸魚ニ三種に、いかを交へ用。鯛は中なるよし。仕様、鱧に仝じ。

※ 「勢州」は、伊勢国いせのくに
※ 「仝じ」は、同じ。

鱧かまぼこ仕様。大鱧とへいと云ものあしゝ。中鱧の京にて歩荷かちにといふよし。如常、身をくづし、能骨を去り、うす白水にてする。つくは悪し。桶に水を入、すり鉢をのせ、いかにも静に久しくするべし。すり鉢あたたまらば、桶の水をかゆべし。なかばすりて、やき塩を能ほどに入れ、又、白水を加へ、いか程もすれば、ひめのりのごとく、白くつやおり、時をよしとす。かたきをこのむ人あれども、水かまぼこといふは、いかにもやはらかなるかし。

※ 「能」は、よく。
※ 「白水」は、白米のとぎ汁のこと。(参考:『大日本国語辞典 巻2(白水)』)
※ 「能ほどに」は、よきほどに。

大板に付るは、はゞ三四寸、長七八寸、かうの高きはわるし。うすく平めに付け、上をひたとなずれば、焼て皮となり、こはばり悪し。なずべからず。

※ 「なずれば」は、ずれば。なでれば。

焼やうは、深き大でんぼにいれ、又、でんぼにてふたをして、火つよくたけば、むしやけに成る。これ第一の焼やうなり。第二は、炭火にして、板の下は大よはく、わきに火つよくして、すり鉢かなべを打きせて、むしやき也。小板は、常のごとく、甲をなづるはあしゝ。

※ 「でんぼ」は、小さな焙烙ほうろくのこと。(参考:『大日本国語辞典 す-な(でんぼ)』)

鯛のすり身にいかをまぜ、如 右すれば、大やう、はむのごとくなる。いかなければ、ねばりなく悪し。其時は、極上の白米にて、めしをずい分やはらかにたき、すり鉢にてよくすり、冷して、魚のすり身と塩を合、よく/\するべし。尤、白水にてかげんすべし。

※ 「大やう」は、大要たいよう。大体のところ。
※ 「はむ」は、はも

何かまぼこにも、酒をさしたるは大きに悪し。ともだしとて、はむのあらをお●し●たるも悪し。おねばは能事もあり。玉子の白みなど甚悪し。

一書、染分といふは、如常の摺身を四分斗、大板に平め付け、一あぶりして、又、鳫のすりみを、如右こしらへ置、其上に四分斗付て焼。大口に切は、赤白の染分になる。

※ 「斗」は、ばかり。
※ 「鳫」は、がん。雁。


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

ふな

大鮒は、片身ばかりを小串、皷付焼。小鮒は、田がく、さんせうか、たうがらしみそ。

※ 「さんせう」は、山椒さんしょう
※ 「たうがらしみそ」は、唐辛子とうがらし味噌。

あゆ

塩焼、漿付焼、石焼。

うなぎ

かばやき、皷付焼、小串。焼様、前にしるす。

たら

塩だら、生鱈、其まゝ焼。干魚の分、皆炙て取合ものになる。

貝類かいるい

あはび、あかゞい、たいらぎ、かき、蛤、みるくい、此分、でんがく、ゑび、くるまゑび、かに、塩いり。



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