【観音霊験記 秩父巡礼】第七番牛伏青苔山法長寺/花薗左衛門督長臣某 4 mominaina 2024年7月27日 11:16 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼第七番牛伏青苔山法長寺 花薗左衛門督長臣某』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 第七番牛伏うしぶし 青苔山せいたいざん法長寺ほうちやうじ 六道ろくだうを かねてめぐりて おがむべし またのちの世よを きくも牛伏うしぶし奉額 誰たが罪つみの 種たねやこぼれて 蛇いちご花薗はなその左衛門さゑもんの督とくの長臣ちやうしん 某なにがし𣴎平じやうへいの頃ころ、當郡たうぐん 末野すゑのの郷がう 花薗はなぞのの城主じやうしゆ 某なにがし 左衛門督さゑもんのじやう の 長臣ちやうしん 某なにがし は、放逸はういつ邪悪じやあくの者ものなりしが、相馬さうま将門まさかどの謀逆ばうぎやくに与くみして、天慶てんけい三年、官軍くわんぐんに攻せめられて山林さんりんにしのびしが、終つひに死すす。爰こゝに、一僧いつそう 當寺たうじの観音くわんおんを携たづさへて 其その辺ほとりに兵乱へうらんを避さけて居ゐたるがゆへ、長臣ちやうしんの ■なきがら [■は骨+盍] を埋うづむ。※ 「𣴎平じやうへい」は、承平じょうへい。平安時代前期、朱雀天皇の御代の年号。其後そのゝち、平穏おだやかになりて、迯にげ去さりし土民どみん等らみな/\住家すみかに皈かへるがゆへ、かの長臣ちやうしんの妻子さいしも縁家えんかに皈かへりて 夫おつとの行衛ゆくゑを捜さがせしに、かの僧そう死しゝたることを語かたればことにかなしみ、その塚つかに時々とき/\詣まうでけるうち、縁家えんかの牛うし、犢こうしを産うみぬ。この犢こうし、此この 妻子さいしを慕したふがゆへ、一日あるひかの塚つかへ牽連ひきつれしに、塚つかの前まへに膝ひざまづきて 涙なみだを流し人語じんごをもつて「我われは汝なんぢが夫おつとなり。悪心あくしんの報むくひによつてかゝる牛となれり。何卒なにとぞ、妻子さいしともに出家しゆつけとなりて、この観音くわんおんを供養くやうせば、必かならず得脱とくだつせん」といふより、直すぐに死しせり。※ 「得脱とくだつ」は、仏語。生死の苦界から脱して悟りの境地に向かうこと。是これによつて、かの妻子さいし 即座そくざに髪かみをおろして尼あまとなり、夫おつとの悪報あくほうを観音くわんおんに祈いのりしかば、終つひに畜生ちくしやうを轉てんじて聖衆じやうしうに生うまれしはふしぎの灵験れいげんなり。※ 「聖衆じやうしう」は、極楽浄土の諸菩薩のこと 。※ 「灵験れいげん」は、霊験。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #牛伏堂 #法長寺 4