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『料理綱目調味抄』(11) 吸物の部/肴物の部
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吸物の部
一書、汁物とかくべしと云々。
吸物は
大概、二三の汁のかろき物也。四季ともにあつく、椀の中きれいにあんばいを専にすべし。だし、皷、漿仕立て。
※ 「あつく」は、熱く。
※ 「あんばい」は、塩梅、按排、按配。
鯉 鮒
和皷。子ともに、筒切。さんせう。おろして切目の仕様、前に印す。
※ 「和皷」は、和味噌。袱紗味噌。二種の味噌を合わせた合わせ味噌のこと。
※ 「さんせう」は、山椒。
鮎
中小なるを焼て、うすみそ、山椒のめ、同わり粉。はす、はぜ、もろこの類、皆おなじ。
※ 「はす」は、肉食性の鯉の仲間(コイ科ハス属)。
※ 「もろこ」は、鯉の仲間(コイ科タモロコ属)。本諸子。
鰌
しるのごとくして、あんばい、もり方、かろくすべし。すり山椒、青さんしやう。ごりも同じ。
※ 「かろく」は、軽く。あっさりと淡泊に。
※ 「ごり」は、カジカやヨシノボリなどの淡水魚のこと。
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王餘魚
小なるは丸ながら、中は開きほね去り、塩仕立て、かろく。梅ぼし、のり。
鳥類
汁に似る様に、取合、もり方、按排かろくすべし。大かた、だし、塩仕立なるべし。取合もの汁の部に出ん。
魚貝
右におなじ。専に用もの、しろ魚、かき、蛤、にし、さゞい、馬刀、あさり、みるくい。取合、のり、みる、花いか、ひあわび、ゑび。
※ 「さゞい」は、栄螺。
※ 「みるくい」は、みる貝のことと思われます。
塩鱈
だし仕立。塩だらは胡椒。干たらは刺て、吸口 葱。
蠣
一書、うぶ汁をにたて、かきを打入て、上 ●● かきを椀に入て、あつき汁をさすべし。煮過まじき為也。吸口、わさび。
豆腐
だし、塩仕立。にへたゝせ、豆腐大ざいに切、にへたてゝ、契梅ぼし、茶事の吸物度々有申也。
※ 「にへたゝせ」は、煮えたたせ。
※ 「大ざいに切」は、大賽に切。大き目のさいころに切ること。
※ 「契梅ぼし」は、ちぎり梅干しのことと思われます。
納豆
如常汁のうすき加減にして、雲雀をたゝき丸めて入たるよき吸もの也。吸口、柚。
※ 「如常」は、常の如く。
淡雪
卵の白みを紙にてこし、鉢に入、ちやせんにてふりたて、うす皷、だし、塩仕立の汁たゝせて、金杓子にてすくい切て入、其まゝ出す。
惣て吸物は、饗應の前中後ともに用て、其時々に順ものなれば、臨機応変にて定がたし。亭主作意も次第の事なれば、大略をしるすのみ。
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肴物の部
精進は蔌也。
煮物は
鱆、かまぼこの普事は不 載 之。右 所 謂の鯖引物の内を以すべし。又、三の巻にも肴とすべき物 品々有り。
※ 「蔌」は、青物、野菜の総称の意味。
※ 「鯖引物」は、誤読しているかもしれません。
取肴は
からすみ、めざし、木のはかれい、ほぐし物、すじ、干魚の類、するめのし。精進は、あぶり物、柚べしの類。
※ 「木のはかれい」は、木の葉鰈。メイタガレイの別名。
※ 「柚べし」は、柚餅子。
冷物は
栗、梨、りんご、橘類、ざくろ、ぶどう、いちご、くろくはゑ、大こん、はす、防風。此内、酢みそにても。
※ 「くろくはゑ」は、黒慈姑と思われます。
後段
麪類、菓子、木み、事繁多なれば、略 之。迫而可考之。
※ 「麪類」は、麺類。
一書
△五種のけづり物といふは、丸蚫、いりこ、さめのみ、するめ、はむ、此肉なき物あらば、干鯛をつかふべし。亀の甲に盛と云々。秋日、取肴の古実とみえたり。
△いせゑび、二つにおしわり、生姜酢をそへてまいらす。
△さゝいつほを打わり生なから作て、生姜酢にてまいらす。
△雉子のかしらを割て、あぶり、御肴にまいらす。御狩の時、山蔭と申て上る。秋日きじの山かげと云事、此事か。
△郭公、かはらけにもる。錦をかいしきにしてもる。古実なり。如此の賞翫ものなりと云々。
※ 「五種のけづり物」は、礼式用の料理で、青・黄・赤・白・黒の五色に見立て、乾物の魚介五種を削って器に盛ったもの。
※ 「さゝいつほを打わり生なから作て」は、栄螺壺 打ち割り 生ながら作りて(さざえの刺身)と思われます。
※ 参考『実用家庭料理法(雉子の山かげ汁)』
※ 「かはらけ」は、土器。
※ 「かいしき」は、掻敷、皆敷。食物を器に盛るとき、下に敷くもののこと。
※ 「賞翫」は、味のよさを楽しむこと、賞味すること。しょうがん。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖