【観音霊験記 秩父巡礼】第十番万松山大慈寺/摂州の儒士 8 mominaina 2024年8月14日 20:29 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼第十番万松山大慈寺 摂州の儒士』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 第十番 万松山ばんせうざん大慈寺だいじじ ひたすらに たのみをかけよ 大慈寺だいじでら 六のちまたの 苦くにかはるべし奉額 花はなで実みの さだめはしれぬ ひさごかな 攝州せつしうの儒士じゆしや當所たうしよに摂州せつしうより来きたりし儒者じゆしやの住すみけるが、因果いんぐわ應報おうほうをしらず。たゞ佛道ぶつだうを■のゝし [■は罒+言] り、僧そうを賊ぞくのごとくに辱はづかしめけるに、或ある時とき この本尊ほんぞん、老僧らうそうとなりて彼かれが家いへにおもむき、談話だんわに及およびければ、儒士じゆしや大に悦よろこんで佛法ぶつほうをさん/\に排はいし「普門品ふもんぼんの偈げに羅刹らせつ鬼國きこくの文ぶんあるが、そは何いづれにあるや。是これ皆みな 偶言ぐうげんなれば、更さらに益えきなし」と讒ざんしければ、僧そう 笑わらつて曰いはく「吾わが 佛教ぶつきやうの深理しんり、汝等なんぢらごとき腐儒ふじゆのしるところにあらず」と答こたへければ、※ 「攝州せつしう」は、摂津国せっつのくに。※ 「さん/\に」は、さんざんに。※ 「普門品ふもんぼん」は、法華経第八巻第二五品の観世音菩薩普門品のこと。※ 「羅刹鬼らせつき」は、人をたぶらかして血肉を食うという悪鬼。のちに仏教に入り、守護神とされたそうです。居丈高ゐたけだかになりて、満面まんめん朱しゆのごとくにして鍔元つばもとをくつろげ「汝なんぢ、無法むほうの入道にふだう、さあ、らせつきこくは何いづれにあるや。疾とく見みせよ。見みせずは虚言うそなり」と、既すでにうちかゝらんとするとき、手先てさきを如意によいにてたゝき給ひ「それ、汝なんぢが問とふ。らせつきこくは、則すなはち 汝なんぢがその忿怒ふんぬのさまをいふなり」と、笑わらつて失うせぬ。※ 「如意によい」は、僧が読経・説法のときに持つ僧具のひとつ。儒士じゆしやたちまち 此この一言いちごんにてさとり、僧そうを拜はいせんとすれども見みへず。これによつて、此この堂だうの傍かたはらに家いへを轉てんじて佛道ぶつだうを信しんじければ、その後のち、灵驗れいげんを蒙かうむりたりとなり。※ 「 灵驗れいげん」は、霊験。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #大慈寺 #観音普門品偈 #羅刹鬼 8