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江戸高名会亭尽 白山傾城か窪

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『白山傾城か窪(江戸高名会亭尽)

狂句合
  玉子の厚焼き
    大鉢へ数万金   扇枩

白山傾城か窪

「白山傾城か窪」は、日本橋から始まる 中山道なかせんどう の 街道筋にあたり、現在の文京区白山エリアになります。近くには 白山はくさん大権現だいごんげん もあることから、中山道を行き来する旅人や参拝客でたいへん賑わいました。

※ 白山大権現は、天歴二年(948年)に 加賀国 の 白山比咩しらやまひめ神社 を勧請したもので、現在の 白山はくさん神社 です。

※ 傾城か窪(鶏声ヶ窪とも)という地名は、この近くに 下総古河藩の下屋敷 があり、毎晩  鶏の声がするので、その場所を掘ってみたら金の鶏が現れたという故事に由来するものだそうです。

🐓

道中の客で賑わっているのは「即席御料理  万きん」です。

「玉子の厚焼き  大鉢へ  数万金」と狂歌にあるように、この店の名物は  厚焼き玉子だったようです。

そのレシピは想像するしかないのですが、魚のすりみが入った伊達巻風の玉子焼きではなかったか … と思います。

「万きん」の前で立ち止まっているのは、参勤交代の一行でしょうか。徒歩の男たちは みなお揃いの 濃い藍色の上着を着ています。(一方の馬子まごは薄い藍色です)

馬の背には、たくさんの荷物の上に 褞袍どてら のようなものを広げて、武士と思われる人物が座っています。携帯する二本の脇差には  柄袋つかぶくろ  がかけられています。

また、よく見ると「万きん」の軒下に籠があります。

もしかすると、この人たちは  参勤交代の先番の女中に付き添う一行なのかもしれません。接待する店の若い女性の目線の先には、年寄格の女中がいて、甘い玉子焼きに舌鼓をうっていると思うと、なるほどさもあらんという感じがします。

海苔巻き卵焼き
Photo by mominaina



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