『料理綱目調味抄』第二巻(2) 汁の部
作 ■ [■は月+隺] 饌 液 皆、羹也。
皷汁 味噌
白皷、赤皷、溏皷、薄皷、和皷は中皷也。■皷。[■は扌+㫖]
※ 「和皷」は、袱紗味噌。二種の味噌を合わせた合わせ味噌のこと。
清汁
塩仕立、甘湯仕立は漿を不 如。若漿を用は、かくして用様あり。尤うすだれを用るはよし。
※ 「漿」は、飯の部に「漿」とあり、醤油のことと思われます。
「何汁」と云もの
鯨汁、鮒汁、河豚汁、鱈汁、鮟鱇汁、鯛どろゝ汁、鰌汁、蜆汁、鳥汁、■蕷 [■は艹+暑]、菜汁、芋汁、芋茰汁、昆布汁、石■汁 [■は艹+専]、蕗汁、韮汁、葱汁、■菔汁 [■は艹+皿+堆]、蕪汁、苣汁、人参汁、大根を云、茄子汁、笋汁、不識汁、納豆汁、△納豆悖、△河豚悖、△水雲汁。
△此印の分、奥に註。
「本」と書は
本汁也。「二」と書は二の汁也。「三」と書は三汁也。「本二」「本三」と書は、本にも二にもと云也。
「皷」又「清」
皷仕立、清仕立。又、両様相兼は「皷清」と書。又、溏みそ、赤みそ、和みそは、小書に一字以印也。
「具」と書は
鳥づま也。大具あり、小具あり。交に可 用もの、大こん、ごぼう、ふき、せり、ひともじ、よめな、わらび、うど、なすび、ふり、松ろ、松だけ、しめじ、なめ、しゐたけ、いはたけ、笋、さゝげ、やきふ、焼豆腐、わかめ、ちさ、ほうれん草、土筆。一書に取合の物は昔は「かうど」とあり、交等か。
「取合」と書は
かならず其物によく相恋するもの也。魚に、魚貝類何にても取合よき物をしるす。
「吸口」と書は
柚、同花葉、山枡、同め、葱、ふきのとう、うど、わさび、しそ、たうがらし、めうが茸、ちんぴ、相恋する吸い口を印す。
※ 「山枡」は、山椒。
※ 「同め」は、同芽。
※ 「めうが茸」は、茗荷竹。
可 用 汁 鳥の部
一書生鳥はうすく塩、鳥は厚く造べしと云々。仕方は大略おなじ。
※ 「可 用 汁 鳥」は、汁に用いるべき鳥。
鶴
「本二皷」「本清二」 小具必用ゆるもの筋と云。吸い口を不 用。鶴の香を賞するゆへ也。一書も焼して、竹刀にて油をこそげおとし、いくたびもかつこうにし、油出やみたる時、水へ打入、ひやすべし。其度如 常。中を洗ひほそく作るべし云々。
※ 「かつこうにし」は、誤読しているかもしれません…。
雁
「本二皷」「本二清」大具、小具ともに用。青みを加ふ。生塩ともに用。具は時節によるべし。吸い口はいつも柚の類。
雲雀
「本二皷清」賞翫のもの也。塩は「三」にも用。茶事の汁に、ほしな汁に加てよし。又、扣き、小くつまみ、納豆汁に加てよし。
※ 「扣き」は、たたき。
白鳥
「本皷」「二清」生鳥を用。賞翫のもの也。但、たま/\合ふもの、多食すべからず。
蒼鷺
「本二清」小具。必可 用もの油所と云ものあり。生鳥を用。夏の系物也。吸口、花柚。
※ 「系物」は、景物。四季折々の趣のある事物、またその場に興を添える珍しい料理など。
鷭
「本二清」小具。夏の系物。生を用。吸口、花柚。大ばん、小ばん、くゐな、皆おなじ。
鳬
「本二皷清」大具、小具、又、線ろふ、葱、芹、漬しめじ、うど。吸口、柚、塩鳥にはさんせうのめ。一書、両の身を一方宛にわらにてくゝりさげ、一夜油をたらしてのち 如 常作るべしと有り。昔の仕方面白し。
※ 「線ろふ」「漬しめじ」は、誤読しているかもしれません…。
※ 「さんせうのめ」は、山椒の芽。
雉子
「二三清」大具、小具、汁には多塩鳥を用。うすく切り、煮過れば強し。厚く切べし。吸口は時々可替。
鳩
「二皷清」小具、生、塩ともに用ゆ。真鳩俗云、珠数かけと云ものよし。
鶉
「二清」大具。皮牛蒡、椎茸、獨活。吸口、柚木のめ、鷺、鴫、ぼとしぎ、ひえ、えどりの類、調味おなじ。皆生鳥を用。
※ 「ぼとしぎ」は、ぼと鴫。山鴫の別名。
※ 「ひええどり」は、ヒヨドリのことと思われます。鵯。
参考『中等作文辞典』『芸術資料 第2期 第10冊』
鶏
「二三清」大具。吸口、葱、獨活、山葵。
鶏卵
「二三皷清」煮ぬき、かふのやき、ほそく切てか、取合、葱、牛蒡、よめな、芹。吸口、柚。
※ 「かふのやき」は、誤読しているかもしれません…。
※ 「煮ぬき」は、茹で卵のこと。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖