【観音霊験記 秩父巡礼】第十五番母巣山蔵福寺/湯尾峠の奇談 9 mominaina 2024年9月25日 05:44 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼十五番母巣山蔵福寺 易尾峠の奇談』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 十五番 母巣ぼそう山蔵福寺ざうふくじ みどり子この 母はゝその森の 蔵福寺ざうふくじ 父ちゝもろともに 誓ちかひたのもし奉額 子こを多おほく もつ事世話せわしき 乙鳥つばめかな※ 「乙鳥つばめ」の乙鳥は、つばめの別名。いっちょう、おっちょう。湯尾峠ゆむをとうげの竒談きだん近江国おふみのくに堅田かたゞの商人あきんど、越前国ゑちぜんのくにへ行ゆきて、湯尾峠ゆのをとうげを通とほりけるに、怪者あやしきもの 十余人よにんたがひに物語ものがたりするを聞きくに、「今年ことし江州ごうしうの人種ひとだねを尽つくさんと思おもひしに、定朝じやうてうめが十一靣めんの像ぞうを作つくりて防ふせぎしゆへそのことならず。是これより東国とうごくにおもむかん」といへば、※ 「十一靣めん」は、十一面。※ 「定朝じやうてう」は、平安時代中期の仏師。和様と称される仏像彫刻様式を完成させた人物として知られています。一人ひとりが言いふやう「若もし又またその観音くわんおんを東国とうごくに移うつさば、いかゞすべし」といへば、「その時ときは吾わが輩日本につぽんには住すまはれず、あないま/\しき定朝ぢやうてうかな」と私語さゝやくを、かの商人あきんど聞きく。「これこそ疫神えきじんならん」と大おほいに恐おそれて、国くにへ皈かへりていそぎ定朝じやうてうにかくと告つげければ、※ 「私語さゝやく」は、ひそひそ話。私語ささめごと。坂本さかもとの地ちにある尊像そんぞうを商人あきんどに授さづけて「是これを東国とうごくに持行もちゆきて、諸人しよにんの疫難えきなんを救すくふべし」とあれば、急いそぎ東国とうごくに持もち下くだりしに、當所とうしよ佛意ぶついに叶かなひし灵驗れいげんなるによつて、此地このちに安置あんちせんことを願ねがへば、領主れうしゆより俄にはかに堂舎どうしや建立こんりうありて、疫難もまぬかれ、永ながく尊たうとき灵場れいぢやうとはなれり。※ 「灵驗れいげん」は、霊験。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #定朝 #蔵福寺 #湯尾峠 #母巣山蔵福寺 9