
【観音霊験記 秩父巡礼】第十三番旗下山慈眼寺/火災の利益

『観音霊験記 秩父巡礼十三旗下山慈眼寺 火災の利益』

観音霊験記 秩父順禮 十三番 旗下山慈眼寺
御手にもつ はちすのはゝき のこりなく
浮世の塵を はけの下寺
奉額
人に魚は 見せぬと蓮の 浮葉かな

火災の利益
當所は、日本武尊東国を征し給ふ時、□ 旗を建給ふ所なればとて「旗の下」といひつるを、今いひあやまりて「はけの下」といふ。
當寺のまだ建ざる 古 より此所、佛意に叶ふ地なれば、常に紫雲たなびきて、天より曼荼羅華を降して、音楽の響き絶ざる灵場なりしとかや。
※ 「灵場」は、霊場。

さて、灵驗あまたあるなかに、いとも有難きは、此大宮町の高野氏の娘、江戸中橋なる 某 に嫁したるが、明暦丁酉の年、正月十八日の大火災のせつに、万死をまぬがれて一生を得しこと、その頃の板行になりし。空穂猿といふ冊子にくわしく出たるとなれば、爰に贅せず。
※ 「板行」は、 書物などを印刷して発行すること。
※ 「空穂猿」は、江戸時代中期に出版された『御伽空穂猿』のこと。該当箇所を早稲田大学図書館古典籍総合データベースで読むことができます。『御伽空穂猿. 巻第1-5 / [摩志田好話] [作](秩父慈眼寺くはんをん霊験の事)』
※ 「贅せず」は、必要以上の言葉を付け加えないという意味。

筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。
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