仲秋の定点観察-雑草研究。
第十四節気 【白露 はくろ】White dew 9月7日~ 江戸時代の『暦便覧』によると、「陰気ようやく重なりて露凝りて白色となれば也」とある。陰気とは、単純に言えば寒さ、陽気は暑さのことで、春夏は陽、秋冬は陰とされる。朝晩の気温が急に下がり露がおりて白く輝くと言う意味である。ここからは陰の季節に入って行くと言う事であろうか。
第四十三侯 【草露白 くさのつゆしろし】9月7日~11日 Dew glistens white on grass
この頃は同時に月の美しい季節でもある。満月の中でも中秋の名月は格別である。月の明るさが夜露に映り「月露」とも呼ぶ。やはり陰気が漂い始め秋真っただ中である。月に照らされて美しい夜露、夜明け前に降り、朝日に輝く朝露、どちらも風情のあることだ。 露が白く光る情景をとらえてみたいが、夜明け前に起きてスタンバイしなければいけない。昼と夜の気温差があって、天気が良い日の朝に見られると言う。夜型の私にとっては難しい。もし運が良ければと言う程度にしておこうと思う。 【沼の定点観察再開】 今朝は仙台では最低気温が8度くらいまで下がったが、日中は一滴の雨も降らず、湿度も低くさわやかな一日だった。9月に入ってから雨が降らなかった日は初めてとのことだった。ところが今日一日だけでまた明日から雨模様だと言う。
昨日から天気予報を聞いていて今日こそはあそこに行って見ようと決めていた。7月23日にネムノキを見に行ってから一度も足を踏み入れていなかった窪地の沼である。8月初めは暑くてとてもあの草むらを歩く気にはならなかったし、お盆の中旬は連日の雨、そのあとは又残暑が戻りそして雨降り続きだった。窪地に降りる道に入ると,葛かと思われる大きな葉が通路まで這っていた。これは沼の回りはいかばかりかと不安になって歩いて行った。
【オオブタクサの林】 しだれ桜とネムの木の道は一面2m以上もあるかと思われる花穂を付けた草が空に向かって真っすぐに生えている。私の身長を遥かに超え、沼が全く見えない。 『オオブタクサ』、これは、秋の花粉症の元凶である。ここ二十年来、9月の声を聞くと秋の花粉症に悩まされている。ところが今年はまだ症状がない。もしかするとずっとマスクをして暮らしていたお蔭だろうか。明日から花粉症になれば、この散策のせい、と言うことになる。オオブタクサがこんなにも堂々とした雑草だとは知らなかったし、その威厳ある姿には説得力もあったが、花粉症は困る。
景色を遮るほどのオオブタクサ
林立するオオブタクサ
自転車とオオブタクサの高さ
【ヒシモ】 しだれ桜とネムノキの側からは溜池が見えた。気になっていた水面に蔓延っていた『ヒシモ』を見た。少しは減ったようだが、一面緑色から茶色に変わっていた。枯れ始めている。これから腐って沈み、又栄養を蓄え、来年芽が出ると言う。ヒシの実は水鳥や白鳥の食糧にはなるけれど、毎年悪循環で増えてくる。一度刈り取ればよいのだろうけれど、農家の方も手が回らないとのこと。こんな身近なところでも生態系のアンバランスが見られる。
【居残り組の二羽の白鳥と野良猫の確認】 怪我をして留鳥となって住み付いている2羽の白鳥は今回も見当たらなかった。この沼に毎日通っている方が白鳥は草むらで休んでいる、と教えてくれて安心した。シロちゃんは無事、とわかった。あとは野良猫のクロちゃんの安否である。以前よくいた沼への下り口の坂道にはいなかった。景色を見ながら歩いていたので足もとに目が行かなかった。私の脇に何か黒いものが落ちていたような気がして、振り向くと、クロちゃんが横になって休んでいた。クロちゃん?と声をかけると、すぐこちらを振り向いて鳴いたのでホッとした。心なしか元気がないが、クロちゃんには優しいおばさんが寝床をしつらえ、餌付けをしているはずである。白鳥は二羽で仲良く暮らしているし、心の中でこれからも無事で、と思うだけであった。
【今日咲いていた草花】 ススキの株もかなり目に付いたが,こちらはれっきとした秋の七草の一つで万葉の頃から咲く『尾花』。秋空に映えてちょうど見頃であった。お月見のススキはここでおすそ分けにあずかろう。
小さな花を咲かせている草もあった。初めて知ったのは『タカサブロウ』。キク科の一年草で花は極小サイズ。漢方でも使われているし食べることもできるらしい。何でも徳川三代将軍の家光公がタカサブロウのお浸しが大好物だったとか。
まわりの草にしっかり絡み付いている豆のような萩のような小さな花、アレチヌスビトハギもあった。こちらは多年草で、よく知らないうちに種が衣服にくっついているアレである。中国、朝鮮半島、台湾、そして日本に自生するらしい。
その他、キンミズヒキ、イヌタデ(赤マンマ)、月見草、など秋らしい山野草が盛大に蔓延る大型雑草の足元で可憐に咲いていた。
7月も6月も、蔦性の草がはびこっている、と書いたような気がするが、今回は最盛期、そして最後であろう。市の公園課による大規模な草刈りは着々と進んでいる。次回はかなりさっぱりとしていることかと思う。そしてお彼岸ともなれば勢いも鎮まって行く。いくら晴れていても、セミの声は全く聞こえず、虫の声と鳥の鳴き声のみが聞こえていた仲秋の散策だった。これから深まる秋がすでにそこかしこに感じられた。
つらつら書いているうちに日にちが変わってしまって昨日のことになったが、貴重な晴れの一日、家の事もせず、外に飛び出して楽しかった。家の近くで雑草を見ながら歩いただけの話ではある。
では今日はこの辺で。最後までお付き合いありがとうございました。
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