見出し画像

【介護日記】母へのラブレター

母に手紙を出した。
きっかけは断捨離の最中に見つけた膨大な数の母からの手紙。

………………………………………

母の切手コレクション

母は若い頃から切手を集めていた。

季節のものやオリンピックといった限定もの。母の桐箱には収まりきらないほどの切手がある。

小さな頃からそれをこっそり開けては、眺め、字がかけるようになってからは母によく「おかーさん、あの切手、もらってもいい?」とおねだりしていた。
たまに出し渋られることもあったが、結局はいつも渡してくれた。

その桐箱は、今はほとんど使われることなく、押し入れの奥深くに眠っている。

母からのラブレター

切手を収集するだけでなく、母はよく手紙を書いていた。遠方にいる知人や、よく顔を合わせる友人、そして家を離れた私に。

先日断捨離してしまったのだが、母からの手紙は大きな段ボール一箱分になっていた。

18歳で家を出てから、京都、ウガンダ、東京と過ごしてきた私に、母は素敵な絵葉書や封書で、私のことを気がけてくれた。

断捨離の際、一枚一枚読み返しては泣きながらゴミ袋に入れた。今は猛烈に後悔している。

母は今、文章を考えることも文字を書くことも自発的に出来ない。私がお手本を書いて、それを書き間違えながら、なんとかやっと書き上げる。
それもこれからは危ういだろう。

母の字はとても美しかった。
母の文章は相手への慈愛に満ちたものだった。
母の手紙はセンスの塊だった。

今はもう叶わない。
だから、今度は私が母に手紙を書く。


………………………………………

お母さんへ

お母さん、こんにちは。
秋めいた空だけど、まだまだ暑いね。
元気にお過ごしですか。

私は今、人生ではじめて何もしない時間をゆっくり過ごしています。

いつも忙しなく働いていたお母さんも、今ゆっくりできてるかな。そうだといいな。

来週はお母さんの誕生日だね。お父ちゃんがそばにいなくて、寂しいね。

お母さんも70歳かあ。当日は一緒に美容室行って、美味しいランチ食べようね。

こちらに越してきて、一年。
去年は見事な銀杏並木の下をよく一緒に歩いたね。今年も一緒にお散歩しよう。

お母さん。
私お母さんが大好きだよ。
お母さんはいつまでも世界一美しくて聡明でエレガントでマーベラスでファビュラスでスペシャルだからね。

またお手紙かきます。

娘より


いいなと思ったら応援しよう!