【介護日記】認知症母の哀しき目覚め
アルツハイマー型認知症の母が、ゆるやかに目覚めた。
クリニックからもらっている薬が影響し、言動がはっきりしてきた数ヶ月後、母は明け方に泣くようになった。
涙のわけは、自分が自分でなくなる自覚からくる哀しさ。
苦しい
思うように体が動かない
助けて欲しい
明け方、トイレに行こうと起きようとして、自分の力で起き上がれないから泣く母に、どうしたのと尋ねると切実に、辿々しく苦しさを訴えようとしてくる。それは短い言葉すら紡げない母から発されるSOS。
もどかしげな母の体を起こし、背中をさすり、トイレへと手引き誘導する。
トイレに着くと、手すりにつかまってもらい、リハビリパンツとズボンを下ろす。
母が用を足してる間は静かに待ち、またお尻を拭き、パンツとズボンをはかせる。
そうしてベッドに戻すと、また背中をさする。
何も出来ないことないよ。ちょっと私のお手伝いがいるだけだね。
最後は、お母さんはこの世で一番スペシャルだよと言って額にキスをする。
薬の影響で、自分が置かれている現実を次第に理解し始めた母。それはいいことなのか、分からない。
苦しいのであれば、まだらな世界にいたままの方がいいのかもしれない。
その世界で母がまろやかにたゆたうように幸せな気分であれば、私を忘れてもいいのかもしれない。
母はもうすぐで70歳になる。
お母さん、このまま起きていますか。
眠ったように過ごした方がいいですか。
お母さん、私の声が聞こえていますか。
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