「愛されていない」から「愛されていたんだ」に変わったこと#思い込みが変わったこと
私は母から愛されていなかったと思って生きてきた。
ずっと、自分のことをどうでもいい人間なんだと思い、大切にしてこなかった。
5歳の時、私は遊んでいて肘を骨折をした。
骨折に気づかずに、母はマッサージをしてくれる知り合いの接骨院へ連れて行った。そこで、マッサージを受けたがあまりにも大泣きしている私を、今度は別の知り合いの整骨院へ連れて行った。
そこで、骨折が判明!
そのあとは、整形外科へ行き、複雑骨折のため即手術。
成長とともに肘は変形し、その変形を恥ずかしいと思うようになった私は肘を隠すように常に曲げていた。
あの頃からだろうか・・・
母は何をしても怒らないので、私には興味がないのだと思い込んだのは。
小さい頃、人見知りの私は、知らない人が近くに来ると母にしがみついて泣いていた。保育園にも馴染めず、泣いていた。
小学4年生になり、学校でちょっとした問題を起こし母は先生に呼び出された。でも母は怒らず、友達のことも悪く言うことはなかった。そんなことを繰り返しながら、怒られない私はどうでもいいんだ・・・そう思った私は家には居場所がないと思い始めた。
何かをやりたいと言ったら、やらせてくれる。
やりたいと始めたことを辞めたいと言っても、受け入れてくれる。
どうして、怒らないんだろう?続けなさいと言わないんだろう?
姉や兄には強制的に習字を習わせたのに、私にはどうして言ってくれないんだろう?
あ~、やっぱり私はどうでもいいのか・・・
いつも姉兄と喧嘩するたびに「お前は橋の下から拾われた子」と言われていた。
今なら冗談だってわかるけど、心が敏感だった私には悲しくて、寂しくて、辛くてしかたなかった。
高校卒業後、実家を離れ、居場所を求めて結婚して子供を生んだ。でも、子供は私が守らなきゃという思いが強すぎて、旦那さんを大切にできなくて離婚。誰かに頼ることができなかった私は、全部自分ひとりでやらなきゃいけないと思っていた。
シングルマザーになった私は仕事よりも子供を優先して育児した。
パートや派遣、いろんな仕事をした。仕事に行った先々で、社員にならないかと話を頂いては退社していた。社員で働きたいと言っているのは私なのに、私には社員なる資格がないという思い込みが発動し、チャンスを逃してきた。
本当に何をやっているんだろう、馬鹿だな~と思う反面、その分子供といる時間が増えたので後悔はしていないし、何より毎日が楽しかったから。
そして、いろんな仕事を覚えることも楽しかった。
子供には、私が子供の時に母にして欲しかったことをたくさんしてあげた。
ギュッと抱きしめたり、一緒に布団で寝たり、一緒にお風呂に入ったり、熱を出したらずっと横に居て看病したり、一緒に泣いたり、一緒に怒ったり、一緒に笑ったり・・・
子供が大人になったある日、「俺は自分のことが大好きだよ、生んでくれてありがとう」と言ってくれた。
あ~私のこと、認めてくれる人がいたんだ~、生きていて良かったんだ~と思ったら涙が止まらなかった。
ずっと、自分の命はいつなくなってもいい、どうでもいいと投げやりだったから。
私は母のことを考えた。
母が私に興味がなかったんじゃなく、仕事で忙しかったことや子供が3人いて家事が忙しかったこと、誰よりも私の肘のことを気にしていたこと、たくさんのことを思い出した。
小学生の頃は毎朝、時間がないときでも髪の毛を結んでくれた。
精神的ストレスで原因不明の発熱、嘔吐を繰り返していた私を仕事を休んで病院に連れて行ってくれた。
肘のことを気にかけて、再手術の話を聞いてきて提案してくれた。
高校ではお弁当を毎日作ってくれた。(反発している私は毎日残していた)
仕事で疲れていても、電話したら駅まで迎えに来てくれたし、バスに乗り遅れたら仕事があるのに学校まで送ってくれた。
そんな母に、私は「ありがとう」と言ったことがあっただろうか・・・
興味がなかったんじゃなく、こんな私に対して母もどう接していいのかわからなかったのだ。母は母なりに精一杯の愛を注いでくれていたんだ。
母の接し方が変わったのは、私が骨折をした時から始まっていたような気がする。
母は周りから責められたのかもしれないし、5歳の私ももしかしたら入院中に何か言ってしまったのかもしれない。絶対に母が病室に来ていたはずなのに、「ずっと傍にいてくれたのは曾お祖母さんだった」としか思い出せない。
でも、少しずつではあるが、やっと母に対して私の勝手な思い込みがあっただったんだと気づいた。
母はいつだって、私の味方でいてくれた。見守ってくれた。愛をくれていた。
今でも、そうだ。何かあると絶対に否定はしないで、がんばれって言ってくれる。
もうすぐ後期高齢者になる母は、まだ元気に現役で働いている。
そんな自慢の母に、私も、
「生んでくれてありがとう」
と伝えたい。