デジタルコンテンツ産業と日本の未来
スーパーマリオやファイナルファンタジー、ドラゴンクエストを代表とする今の日本のゲームには、ノスタルジーは感じていても、近年、大きなイノベーションを起こしていないと感じている海外のゲーマーやゲーム開発者達が多いようです。
私が、ここ数年で大きなイノベーションと感じたゲームは、2009年に登場した「マインクラフト」です。1980年代の名作PCゲーム「ポピュラス」の生みの親であるピーター・モリニューは、マインクラフトについてこう語っています。
「 マインクラフトは過去10年間で最高のゲームだ。マインクラフトの開発者であるペルソンはほとんどの開発者が暗黙のうちに従っているゲームデザインのルールを良い意味で無視した。マインクラフトはデジタル体験を通じて、ユーザーが自分に見合ったエンターテインメントを想像する能力を引き出すゲームだ。その意味ではマインクラフトはユーザーを信頼していると言える。どんな創造物でも、構築したり、破壊したりするのはユーザー次第。それは、デジタルエンターテインメントの新境地を見せてくれる体験だ。」
今回は、インディーゲームの成功から見えてくる今後の日本が歩むべき将来について、語りたいと思います。
日本という国は、昔から外貨を獲得し続けなければ国として成立しない仕組みで成り立っています。例えば、外国から買い続けている石油により、日本の車や電車、火力発電が可能になっています。そして、これは石油だけではなく、電池や電子基板に使用されるレアメタルや大豆や小麦などの食料等多くのモノは一定数、外国から買う必要があります。
ひと昔前までは、外貨が獲得できた市場として、家電製品やパソコン、半導体デバイスの製造などがありましたが、今ではその市場が海外へ移ってしまっており、今後は自動運転や電気自動車の普及が拡大することから、日産やトヨタといった国内の自動車産業も相当厳しい状況になります。
事実、自動運転などのいわゆる次世代自動車産業を巡る主導権争いは、既に始まっています。自動車メーカーにとって、最大の脅威となっているのが、グーグルやアップル、Facebook、アマゾンといったいわゆるGAFAと呼ばれる巨大企業です。GAFAは、完全自動運転で必要となるプラットフォームの構築などの面で、自動車メーカーよりも遥かに先を進んでいると言われており、ひょっとしたら、トヨタやGM、メルセデスなどは、GAFAの市場支配のもと、単に言われる通りクルマの躯体だけを作る組み立て会社となるかもしれません。(地道により良い自動車を作ってきた企業が、自動車に限らない全ての交通手段を新たなシステムにより構築していく企業に飲み込まれるイメージですね。)
いきなりGAFAを例に出して何やらスケールが大きい話になりましたが、今後、日本は、「ものづくり」をやり続けていく限り、どんどん弱くなる一方だと考えます。なぜ、日本では「ものづくり」が難しくなるかというと、主な理由は、人件費が高いことにあります。例えば、今の日本では一般的に月数万円で労働することは無理な話ですが、依然、中国や東南アジア諸国では余裕で働き手が見つかります。なので、企業はこれらの国々の工場に製造を発注します。
「品質の違い」から、高くても日本製が良いという人もいますが、製品によっては、高い日本製品と安い外国製品にあまり「差」がでないものも沢山あります。例えば、100円ダイソーの人気製品なんかは、まさにそれです。
つまり、今後は日本製であるという付加価値だけで売れる時代では、もう無くなると思います。その為、日本が中国や東南アジア諸国の人件費と同じ水準にならない限り、日本が「ものづくり大国」として成り立たない仕組みに既になっていると思います。
なので、アメリカのように、日本という国は、「ものづくり」から「コトづくり」へ、そのマインドと共に大きくシフトしていく必要があると考えます。「コトづくり」のコトとは、ソフトウェアや、情報サービスといったシステムやデジタルコンテンツだったりが、日本の生きる道だと思います。そして、今の時代、ソフトウェアやデジタルコンテンツというのは、能力がある一人もしくは、少数のグループがつくれる時代だと思います。
今の時代、テクノロジーの進歩により、パソコンの能力が向上し、ソフトウェアの開発ツールの能力も向上しています。ゲーム開発においてもiosのアプリであったり、steamで販売されているゲームも、それら様々な便利で高度な開発ツールによって出来ています。
ひと昔前では、ゲームを作ると言ったらプログラム言語を理解し、1からコードを作らなければいけませんでした。しかし、最近は、それらを必要としないミドルウェアが存在し、単純な組み合わせによって簡単なゲームが誰でも作れるようになりました。
このことを踏まえると、日本は、日本人を国内の工場で働かせることを考えるよりも、より多くのソフトウェアやデジタルコンテンツ開発者を生み出し、結果的に彼らがより多くの外貨を獲得できる環境を用意することに力を入れる方が利益率が高くなる可能性があると思われます。
これをインディーゲームの開発を例にすると、様々な個人や少数グループが、様々なインディーゲームを開発するとします。そして、その様々なインディーゲームは決して万人受けする必要はなく、コアな少数が、その対価を支払うということで良いと思います。但し、このコアな少数というのは、日本国内市場を対象にした「コアな少数」ではなく、あくまでグローバル市場と捉えた場合の「コアな少数」です。つまり、日本国内では、コアな少数は10名かもしれませんが、グローバル市場では、そのコアな少数は計り知れない数字となります。例えば、それら開発者が、それぞれ毎月100万円の外貨を稼げたら、それは、とても大きな外貨獲得手段へと繋がると考えられます。
YouTubeに代表されるデジタルコンテンツにおいて、もっとも重要なのが「先行性」です。二番煎じでは、利益を生むことが非常に難しい市場です。残念ながらYouTubeクリエーターで世界市場を支配しているのは、欧米社会を中心とする白人層が多いのが実感で、事実、ゲーム実況として莫大な収入を得ている人は日本人以外の方が多く、そのマーケットは既に白人層に取られています。彼らは英語という言語の優位性を持って、有益な最新情報を素早く入手し、自身のアイデアをいち早く世の中に独自のコンテンツとして配信することで、比較的大きな苦労もなく大金を稼ぎます。しかしながら、デジタルコンテンツにおいて、日本にも、その優位性は存在し、それはアニメ文化になり、これが日本が世界で戦える一つのコンテンツと言われています。
インターネットが発達したことで、あらゆる面で世界との「距離」が急速に近くなり、個人が生み出すコンテンツの発信や資金調達が容易になった現代、実は昔から日本でずっとコアな少数に人気なコトが、ひょっとすると世界市場のコアな少数にも受けるのではないかと思います。「灯台下暗し」や「温故知新」といった「ことわざ」の通り案外、このような地味な発想が今の日本には必要なのだと考えます。
2016年10月より海外インディーPCゲームに特化した紹介動画をYoutubeであげています。このnoteでも情報発信を2019年1月より始めました。