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『ダンダダン』を見て思い出す『妖怪ウォッチ シャドウサイド』がなれなかったもの。
※あらかじめ注意※
この文章は、かつて『妖怪ウォッチ』のファンであった私の愚痴みたいなものなので、あまり読む価値はないです。
今週放送の『ダンダダン』のアクロバティックさらさらの過去話、内容に負けない動画の圧倒的な美しさと力強さで、あらかじめあらすじがわかっててなお圧倒された。
原作の時点でかなり読んでてキツイエピソードだったんで見るときにかなり覚悟してたのだが、お話の進行的さらっと流しても問題ないのに、アクさらの生前の悲惨で悲しいエピソードを全力で表現してきた。
エグいし辛いし、胸糞悪いのにどこかせつなく美しい。
「ここまでやらんでも」
って思うほど酷いエピソードながら、アクサラがあれだけの強い力を持つ怨霊であることに説得力を持たせる意味でのこの世への未練や執着の深さを表すのには必要なんだろうな、とも思う。
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それにしても、美しいシーンだった。
最低限の描写で生前のアクさらがちいさな女の子の母であったころの幸せと、その幸せを維持するための努力、そしてその幸せの終焉と、身内を失ったもの同士が出会う奇跡。
結果で見るとものすごく胸糞悪いのに、その母の娘へ無償の愛が息をのむような映像で紡がれていて、下ネタギャグ満載のアクション漫画のアニメを見てるのではなく、よくできた映画感動作を見てる様だった。同じく胸糞悪くも美しい母親の映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い出す。
細かいことを言えば、原作と比べて分かりづらい部分(自〇のシーンなど)もあったが、深夜アニメとは言えネットフリックスの映画だということを考えるとレーティングなど致し方ない部分があったのかもしれない。
説明的なセリフがない分映像に没頭できるのだが、説明がないだけに見せられたものからいろいろ想像もさせられる。こういうシーンをあまり現実のシステムに当てはめるのも野暮かもしれないけど、寡婦に対する行政制度などを利用すればレジ打ちのパートとかでも裕福とは言えないがつつましくは暮らしてはいけると思う。
でもアクさらが夜職までして稼いでいたのは、娘により良い生活を送らせるため~劇中でもバレエの習い事をさせたりドレスを買ったりしていた~なんだろうか、それとも離婚か死別で旦那を失った際になにやらお金に困るようなことになってたんだろうか~など。あの悲惨な最期からするとヤクザがらみの借金があったのかもしれない。
ラスト近くでアクさらがボロ雑巾のような姿でバレエを踊るのも、当然娘を思うあまりだろうけど、これだけの姿勢で踊れるのはやはり自らもバレエをやってたんだろうなって。(娘と踊るシーンでも体幹の強さを感じさせるポーズだった。)娘に習わせてたのも、自分の楽しかったことを娘にも体験させた方のかなって。
このアニメ(漫画)、ターボババァのエピソードでも感じたけど、ネタとして幽霊を扱うにしても、なんというか霊になってしまった人間への敬意が感じられて、そこがストーリーテラーとしてある種の信頼が持てるところだと感じてる。この作り手にはついて行っても裏切られるようなことはないだろうなぁって。
あなたもありませんか?作品を見てて(読んでて)作品から染み出る作り手の価値観が受け入れられないってこと。私はたまにあります。
ところで、これ見ててかつて『妖怪ウォッチ』ファンだった私がふと思ったのは、アニメの『妖怪ウォッチシャドウサイド』がやりたくて出来なかったのがこういうのだったんじゃないかなぁって。
知らない方のためにざっくり説明すると、かつての大ヒットゲームとそのアニメの『妖怪ウォッチ』が、何を思ったかそれまでの人気シリーズを途中でダーク路線に路線変更したものだ。「妖怪ウォッチ、新章突入」と仰々しいキャッチコピーを引っ提げてリニューアルオープンしたものの、結果はご存じのとおりだ。『妖怪ウォッチ』に限らずレベルファイブは優れたコンテンツを生み出すのは得意だけど育てるのはからっきしってのも知られた話。
私は『妖怪ウォッチ』のゲームもアニメも『シャドウサイド』へ路線変更したこと自体もあまり歓迎してかなったんだけど、それ以上に毎回毎回新しい妖怪出すごとにそいつの「人間だった頃の悲しいエピソードと悲惨な死」が描かれるのが何より嫌だった。
でも本当は「人の死を感動ポルノ的に”雑に”消費してる感じ」が嫌だったんだと、今回の『ダンダダン』を見て改めて思った。
大ざっぱに言うとこの二つの作品がやってることはだいぶ似てる。でもモチーフを扱う際の丁寧さがまるで違う。
『ダンダダン』では悲惨な死を遂げた人の尊厳を、そしてその人が大事にしていた人や世界を丁寧に描いていた。
一方『シャドウサイド』は
妖怪が悪さしてる
主人公たちが退治した
じつは妖怪はこんな不幸なことがあって死んだ人間の変じた姿だった!
…ってのがルーティンのように雑に繰りかえされる。描かれる不幸も「こういう妖怪なら生前こんなもんじゃね?」って誰でも思いつくくらいの特に深みもない話がほとんどで、いかにも「人の死をネタとして消費してる」という感じだった。(そもそも悪霊と妖怪を混同してること自体アレなのだが)
やっぱり架空の人物であろうが、人の死を雑に扱うのは生理的に無理なのだと思う。
(もちろん作品によってはそういう扱いが効果的になるものもあるけど、とりあえず置いておく)
『シャドウサイド』以降の『妖怪ウォッチ』シリーズの悪い点など書き始めるといくらでも書けるのでこの辺にしておくが、以上のように物語の骨格はわりと共通点があるものの、読み手の受ける印象が天と地ほど違う。
思うに、『シャドウサイド』は人の死を題材にした作品に対する作り手の覚悟と実力が足りなかったんじゃないかと。
そもそももともとのアニメの『妖怪ウォッチ』も、ゲームではわりと丁寧にエピソードを重ねてるので、アニメしか見てない方だと驚くんじゃないかってくらい両者の印象が違う。いいエピソードがけっこうあるのになんでアニメでやらないのかってのが本当に多い。アニメの方はとにかく毎回一体の妖怪をピックアップして、主人公たちとそれに関わるドタバタギャグを展開してもらうというかたちで、ゲームの方にあるストーリー性やわびさび的な要素は極力排除されており、とにかく明るく楽しくバカバカしくという雰囲気。
そもそもギャグアニメとしてもわりとてきとうで、オチとかなく投げっぱなしな終わりが多いのが当時はシュールなギャグかとも思ってたが、今振り返るとそれすら単にてきとうだっただけの気がする。
ただしそれが悪いことというわけではなく、アニメの方はどちらかというとお話を楽しませるというよりキャラクター(妖怪)に馴染んでもらおうって感じで、実際人気のピークの時は、ゲームやってない子供でもキャラ人気で飛びついてる状態だったというのも、あの異常なまでの『妖怪ウォッチ』ブームの一因だと思っている。
だが、当時は私もこれを狙ってやってると思ってたのだが、『シャドウサイド』への転身とそれ以降の展開を見るとどう考えてもそれしかできなかったとしか思えない。なぜなら、『シャドウサイド』以降は
小さい子供が馴染めるとも思えないシリアスで暗い雰囲気とかわいくない妖怪
キャラクター全体の高身長(高頭身)化。(キャラの年齢自体もやや上)
むやみにイケメン妖怪(エンマ系など)を増産
と、どう考えても小さい子供向けというよりも大きなお姉さん向けだからだ。
自己コンテンツが何でヒットしていたのか分析が出来ていないのか、レベルファイブ作品はこれに限らず何度も同様の失敗を繰り返す。要するに子供に受けてるコンテンツをなぜか女性向けにシフトする。(たとえば『イナズマイレブン』なんかも、最初はデコボコな少年たちのサッカーアニメだったのがいつの間にか美形のバーゲンセールになっていった)
ここから先は単なる私の憶測だが、ヒットしてるジャンプ作品のような路線を狙ったのかもしれない。基本子供向けだが、キャラなどの人気で中学高校生以上の女性に大人気の作品はたしかに枚挙にいとまがないほどたくさんある。しかし、それらの作品はあくまで子どもを楽しませることが主軸であり、女性人気はあくまでその余波なんじゃないだろうか。そこを勘違いしてか、子供向け要素を排して女性人気を追い求めた結果失速しているという印象だ。
ただし、路線変更で従来の客層を失ったとしても、ホラーアニメという別の路線で成功する可能性もあったわけだが、残念ながらそちらだとしてもまったく及ばなかったのがさらなる不幸だった。先述のように、重いストーリーを展開するには実力が無さ過ぎたのだ。今回『ダダンダン』を見てて強烈に感じたのがここの部分だ。実力がないというのでなければ、題材に対する敬意も熱量もないからなのだろう。
私はギャグアニメやコメディを心から愛する者なので、ギャグをシリアスより程度が低いというつもりではないが、こと『妖怪ウォッチ』(無印)のアニメはお話として面白くなくても楽しげな雰囲気が作れていればある程度成功って感じの求められ方であったし、ゲームのキャラ設定の時点での練り込みもあっただろうから、実力や熱量が無くてもそれなりの脚本が出来てしまったのか知れないとすら思う。
まあぶっちゃけ、いずれにせよ客をなめ過ぎである。
…という感じで、今回の『ダダンダン』の壮絶ハイクオリティな回想シーンに涙しつつ、同時に「かつて好きだった作品がひょっとしてこんな風になりたかったんじゃないか」と思いついてしまい、違う意味でも涙が出そうになったという、個人的な感傷の垂れ流しでした。
『妖怪ウォッチ』ファンの方及びに『ダダンダン』ファンに皆さまには、失礼いたしました。
一応念を押しておくと、『妖怪ウォッチ』を叩くためにわざわざ今期最高のアニメをあてこすったっていうわけではなく、ただただ今回の美しい回想シーンを見て「ひょっとして…」と思ってしまったのを書き留めたまでです。
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トップ画像にしたら耳が欠けてしまったので再掲。(ジバニャンはもともと耳が欠けてるとも言う)
『ダンダダン』の星子さんを見てて、アニメキャラで腹巻と言えばジバニャンとバカボンパパだよなぁって。