ネプリ『第一回 不穏婦人会』
ネプリ『第一回 不穏婦人会』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。
10,000ピースのジグソーパズルでしょうか。
一つとして同じものはなく、全てが等しく全体を構成する要素になっている。
意味のないものがないということは、余白や余裕がないということでもあります。
余分なものが入るから、人生は面白くなる。
意味のあることだけをしていたら、つまらない。
そんなメッセージを受け取ったような気がしました。
自分の境界を守るって難しいですよね。
親しい人であるならなおさら、相手の望む自分でありたいと思ってしまいます。
美味しそうにどろりと溶ける蜂蜜は、見た目とは裏腹に苦い。
他人との境界を見失う甘美さと、危うさを表していると思いました。
不穏なお歌だー!と思いました。
そして人間関係のお歌だと思いました。
主体はこれから、今まで切れずにいた縁を切ってしまうのではないか。
そんな予感がしました。
「白波に足を取られて」、動きにくそうにしている主体を想像しました。
主体は気高い感性の持ち主でありながら、社交性があるがゆえに、自分を突き通せないでいるのかなと思いました。
本当は頷きたくないところで、周りに合わせて頷いてしまったり、愚痴を言い合う人たちの仲間に入ってしまったり。
「すこし」ということは、主体は今の環境に概ね馴染んでいるのでしょうか。
でも、「いつも」感じてしまっているのですよね。
人と一緒にいると、100%自分そのままではいられない。
そんな苦しさを描いていると思いました。
魚類ってちょっと怖いですよね。
じっと見つめてみても、何を考えているのか分からないし。
「ゆっくりと息がつまってゆく人」は、肉体的にというよりは、精神的に追い詰められているのかなと想像しました。
息がつまってゆく人がいて、その人を助けるでもなく、ただマンボウの顔をして見ている人たちがいる。
マンボウ側は、本当は一人一人顔が違うんですよね。
でも、息がつまっている人には、全員同じ表情に見える。
追い詰められた人間の心情が、リアルに描き出されているお歌だと思いました。