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大森静佳『カミーユ』

大森静佳さんの『カミーユ』を拝読しました。
印象に残った歌を読み解きます。

ずっと味方でいてよ菜の花咲くなかを味方は愛の言葉ではない

途方もない願望から始まり、自身を客観視した言葉で終わる一首。

私も、味方が欲しいと思う。
肯定して、励まして、支えてくれる存在。
なんて素敵だろう。
でも、その役割を身近な誰かに当てはめようとした時、信頼は崩れてしまうだろう。
私が、私が、と主張するほど、相手との温かな関係は遠ざかってしまう。

私の世界の中心は私だけれど、相手の世界の中心は私ではない。
追い詰められていると、そんな当たり前のことを忘れてしまう。

人はみんなひとりで立っていて、時々寄り添いながら生きていく。
永遠の味方は存在しない。
ひとりでいることが悲しくても、現実が耐え難くても、私たちはそれぞれの痛みを抱えて生きていく。
相手に「味方」であることを押し付けるのは、「愛」ではないのだと、自分に言い聞かせながら。

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