見出し画像

短歌ネプリ『細やかな生きづらさ 編』

外村ぽこさんの短歌ネプリ『細やかな生きづらさ編』を拝読しました。
好きな歌を引いていきます。

食パンを閉じるアレにも名はあってわたしが消えたらみんな困れよ

「食パンを閉じるアレ」は、バッグ・クロージャーというそうです。
かっこいい名前ですが口慣れないような。
「食パンを閉じるアレ」の方が通じそうですよね。
「食パンを閉じるアレ」がないと、袋の中のパンはかぴかぴに乾いてしまいます。
普段は名前も呼ばないものに、私たちは頼っているわけですね。

下の句、主体は消えてしまいたい気持ちと、誰かに求められたい気持ちの狭間で揺れ動いているように感じました。
消えたい、生きたい。
辛い、もう無理だ。
でも、誰かに辛さに気づいて欲しい。
主体は本当はみんなを困らせたいわけではないんですよね。
ただ、弱っていると、傷つきすぎていると、攻撃的なことを言ってしまいそうになるんですよ。
「みんな」ではなく、誰か一人でいいから、主体の投げやりとも言える孤独に気づいて欲しいなぁと思いました。

絶対に無理ってわけじゃないけれど少しだけ無理だから無理です

少しでも無理だと思ったら断ること。
断る勇気を持つこと。
それは自分を守るために必要な手順です。
私もほんの少しの無理を積み上げて、動けなくなってしまったことがあります。
小さなことからコツコツと。
それは、マイナスを寄せ付けない時にも、有効な心がけなのかもしれませんね。

愛情を注げば美味しくなる野菜そんな素直に生きれなかった

読んだときうわーっ好きです!ってなりました。
愛情って受け取るにも、才能というか、性能?でしょうかね、必要だと思うんです。
愛情を受け取ってすくすく育っているように見える誰かを横目に、主体はちょっとナーバスになっています。
なんだか愛情を受け取れる人、受け取れない人の両極端に人を区別しているようにも感じますね。

でも、待ってくださいね。
注がれた愛情って、0〜100%の間のグラデーションのような吸収率で、その人にしみ込んでいくように私は思うんです。
主体はもしかしたら、100%を目指しているのかもしれません。
ですが、20%でも60%でも、愛情を吸収できればいいのではないですか?
素直じゃないあなたに愛情を注いできた人はきっと今までいたはずで、それはあなたのどこかの糧になってきたはずです。

100%を素直に受け取ろうなんてしなくていいと私は思います。
誰かから何かを受け取るのは、嬉しいけれどしんどいものだったりしますしね。
人間って、きっとそんな単純にできていないから、あなたはあなたのままで大丈夫ですよって、主体さんに伝えたくなりました。

いいなと思ったら応援しよう!