短歌ネプリ『THE FIVE SENSES 2』
短歌ネプリ『THE FIVE SENSES 2』を拝読しました。
執筆メンバーは、斎藤君さん、野良之コウモリさん、インアンさん、夜月雨さん、吉田岬さんの5名です。
それぞれ、視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚を題材に歌を詠んだ、通称「五人五感」という企画です。
気になった歌を引いていきます。
初読では、「老後とは育児の答え合わせ」という言葉を会話の中で主体が直接聞いたのかなと思ったのですが、そういう言説を唱えた人がいる、という意味で「誰かが言って」なのかなと思い直しました。
様々な事情の人がいる世の中です。
一見正しそうに感じる厄介なこの言葉に、もやもやする人や、傷つく人がいるでしょう。
主体も、この言葉に何かを思う人のひとりのようです。
「ずっと夕焼け」は、主体が昼と夜の間で時間が止まってしまったように感じていると読みました。
上の句は、童謡「シャボン玉」の替え歌ですね。
原曲では「壊れて消えた」ですが、人間である主体は壊れるわけにも、消えるわけにもいかず、鬱屈なのか不安なのか何かを抱えて生きていきます。
下の句で急に真顔で話しかけられたような、びっくり感のあるお歌だと思いました。
完璧なものって怖いです。
静かな水面もそのひとつかもしれません。
「投げ入れる」ということは、結構大き目な器に、いっぱいの水が入っている様子を想像しました。
もしかしたら、身近な誰かの心情に「石を投げ入れ」るように、衝撃を加える言葉を言っているのかな、と想像しました。
溢れないように必死で耐えている相手をみて、「安心した」主体は微笑んでいるのかもしれませんね。
なんて不穏なお歌でしょうか。
「、」「っ」の多用がとても効いていると思いました。
息も絶え絶えに、言い訳めいた言葉を吐く主体は、どんな姿の「お前」を目にしているのでしょう。
掲載されている一連は、ストーリー性がありそうで、でも詳細は分からなくて、こちらが不安になる一連でした(褒め言葉)。
「気配」を閉じ込めるって面白いですよね。
大事だから何回も読み返すではなく、存在ごと取っておくために、ジップロックに入れてしまう。
それを開けるたびに、「あなたの気配」は逃げてしまうと主体は思っているはずなので、きっとそんなに開けないでしょうね。
「閉じ込めてある」という言い回しも好きだなぁと思います。
現在進行形の狂気を感じさせました。