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どんな時でもママだけは味方でいてよ!
俺くんが保育園の年中さんの冬。5歳の時のこと。
保育園に迎えに行くと、表情が凍りついてすごく緊張している日がありました。
目が泳いでいるとはまさにこのこと。今にも泣き出しそうに戸惑っている表情。
どうしたのかと近づくと担任の先生が近寄ってきました。
「今日俺くんが私の言うことを無視したので指導しました。
私が集合をかけても無視するんです。でも本人はそれを問い詰めても「悪くない」という態度をとるんです。明日またしっかりと話し合いますのでご家庭でも指導してください。」と。
一体何があったのかと、車の中で詳細を俺くんに尋ねたところ、どうやら折り紙に熱中していたら、先生に突然「先生の指示を無視した」と怒られたと。
「謝りなさい」と言われたけど、自分は何が悪いのか本当にわからなくてなんで?と聞いたら先生はますます怒ってどうしたら良いかわからないと泣き出しました。
わかるよ。俺くんの言うこと、とってもよくわかるよ。
集中すると世界から全てが消えたかのように、そのことにしか意識が向かないからね。ママが声をかけたってなかなか気づかないもんね。
どうしたものかと途方に暮れつつも、彼に状況を説明し、とにかく「気づかなかった」ことを伝えた上で謝ろうと。
先生は謝り方も細かく指導していて、
①謝る(ごめんなさい) ②何が悪かったのか ③今後どうするのか
この3点の練習をしてきなさいと言われたとか。
おいおい!5歳にそこまで?と思いましたが、当時私は教育系出版社の編集をしておりました。
モンスターペアレンツについて社会で問題視されている状況でもあり、私がモンスターペアレンツになる訳にもいかない。そう思い、俺くんと練習しましたとも。帰りの車の中でも、お風呂の中でも。寝る前も。そして、翌日の車の中でも。
「がんばれ!」と保育園に送り出したものの、お迎えに行くと前日よりもしょんぼりした俺。失敗したのか…。
車の中でまた状況を聞くと、緊張してどれかが一つ言えない。そうするとますます先生が「反省してないからでしょ!」と怒り、また失敗。
泣く俺くんを励ましつつ、もう一日頑張ってみようとまた練習。練習ではちゃんと言えるんです。そしてその翌日はどんぐり拾いに公園に行く行事がある日。きっとあれだけ練習したんだからパスするだろうと。
心配しつつもまさかまた失敗するとは思えず俺くんを迎えにいくと、完全に笑顔を失った我が子。また失敗したのかと今日も練習かと車に乗り込んだ。
「今日も失敗したの?」と聞くと、「今日は朝失敗したから廊下にずっと立たされて、その後どんぐり拾いは連れて行ってもらえず、職員室で過ごした。」とのこと。
それを聞いた私は、車の中で逆上。モンスターペアレンツと言われようがクソ喰らえだよ!
「なんなの?それ!」と思わず言ってしまったら、俺くんは自分のことを非難されたと思ったようで、大粒の涙を目からボロボロこぼしながら
「ママ、ごめんなさい。ごめんなさい。俺は悪い子だよ。そしてこれからもずっとずっと悪い子だと思う。でも、どんなに悪い子でもママだけは味方でいてよ〜。うえ〜ん」と声をあげて大泣き。
私は後頭部をハンバーで思いっきり殴られたような衝撃を感じたことを今でもはっきり覚えています。こんな5歳の小さな子に、こんなに苦しい思いをさせて、こんなことを言わせて。なんて親だと。モンスターペアレンツと思われても、とっとと「おかしいでしょ!」と言えばよかったと。ごめんよ。ほんとにごめん。
私は5歳の俺くんから親の本来すべき一番大事なことを教えてもらったのでした。もちろん俺君は全然悪くないよ。そうかそうか、どんな時でも味方がいることがママの役割なのね。
俺くんを抱きしめて一緒に泣いたのは言うまでもありません。社宅の駐車場で🤣
そして、私の腹は決まりました。そうだね。誰だって人生いつも順調とは限らない。うまくいかないことも、脱線することもあるだろう。でもどんな時でもそのままの俺くんの味方でいるよ。それが家族だよね。
俺くんの時々大人をびっくりさせるようなコミュニケーション力、こだわりの強さによる時々起こる人との衝突。興味あることに対するものすごい集中力としつこさ。将来社会と折り合いの悪い時も出てくることもあるかもしれない。
その日は私が練習です。
感情的にならず、どのように保育園とこの異常な事態を建設的に話し合うか。
しっかりとイメージトレーニングをした上で、翌日は保育園に向かいました。
まずは担任の先生、その後は園長先生と話し合いを行い、園長先生から担任の先生に指導が入りました。
(要約すると)
・担任の先生は、子供たちがもうすぐ年長さんになるので責任ある立場になる前に謝り方をしっかりと身に付けさせたくて指導が厳しくなってしまった
・俺くんがほんとに「集合」と声をかけた指示を無視したのだと思っていた。無視したことを俺くんに認めさせたかった
・園長先生は、どんぐり拾いの居残りについて担任の先生に詳細を聞いておらず、「最近自分の指示を無視するので、俺くん を責任持って連れて行けない。なので預かって欲しい担任に言われて、それを信じて詳細を聞いていなかった。2日に渡って俺くんを廊下に立たせていたことも把握していなかった
と言うことで、お詫びが保育園からあった上で、担任の先生の指導が厳しいと他の保護者からも実はクレームが来ていたこと、まだ保育士としてキャリアが浅く、子供達に厳しいことを保育園として指導する、と言うことで話しがおさまりました。その後も担任の先生は他の保護者や先生たちとぶつかることが多く、その年で園を辞めていかれました。
長くなりましたが、この時をきっかけに、確かに担任の先生に問題はあったものの、今後もきっとコミュニケーションで俺は社会とぶつかるかもしれない予感と、彼がどんな状態であっても私は味方でいる覚悟をこの時に私はしたのでした。
俺君が教えてくれなかったら、私はもっと彼を厳しく躾けようとする親になっていたかもしれないと思うし、仕事での人の育成ができず潰す人間になった可能性もあったのではないかと思う時があります。
人の心の痛み、人の育て方、大事な関わり方を我が家の手のかかる天使が私に教えてくれたのでした。