春の食卓
昨日、テディベアがインフルエンザから戻ってきた。見ない間にちょっと痩せていたけれど、すごく背が高くなっていた。「一皮むけたねえ」と言った丘枝先生、あなたやっぱり変わっているよ。でもわかる、正直わたしにもそう見えた。
夫と朝ごはんを食べようとしたら、電話がかかってきたのでわたしが出た。聞き覚えのない声だった。
「春の七草の選択のことなのだけれど、」
「…え?」
「せりなずな、ごきょうはこべらすすきのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」
「ああ、七草粥、」
「たんぽぽは入らないんでしょうか」
「え?」
「それでは、春一番が近日中に保育園にTELしますので。失礼します」
ツー、ツー、ツー、
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう。ごはん食べよう、今日は七草粥だよ」
「七草粥?」
今朝は夫がお粥を煮てくれた。夫が、やわらかい湯気がたつお椀をふたつ、台所から運んでくる。
「おいしそう」
ひと口食べようとしたところで、ふと、小皿に浮かべたたんぽぽの花が目にとまる。昨日、道端に咲いていたのを摘んできて、食卓に飾ったのだ。
わたしは目の前の七草粥に、たんぽぽの花をのせてみた。まるい黄色い花。
夫が手をとめてぽつりとつぶやいた。
「あ、花が咲いた」