骨と書いて、「こつ」と読む
木版画では、アウトライン(輪郭線)を骨と呼ぶ。
それを彫った板は、作品の基盤を担う版でもある。
そして特に浮世絵は骨のあるものが多く、有名な作品の骨は、墨が使われているのがほとんど。
しかし、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」は、骨が藍で表現されている。
無論、それ以外でも「藍摺り」と呼ばれる浮世絵のジャンルもあるが、やはり藍を輪郭に用いた浮世絵の中で最も高名なのは、北斎だろう。
ただ、「冨嶽三十六景」のシリーズには、合計にして四十六点の作品がある。
ーーはい? と思われる方もいるかもしれないが、これには理由がある。
元々は題目の通り、三十六枚の作品だったが、その人気や需要から新たな作品(十種類)を増やしたのだ。
物語などで言うなら、続編的なものである。
そして、追加された十点には一つの特徴がある。
それは、骨が墨であるということ。
故にこの追加組は、裏富士と呼称される。
「黒と藍」
端的に言えばどちらも暗さをもたらす色だが、作品の要となるアウトラインに起用した場合、二つとも全く異なった印象を醸す。
シリーズは同じでも、表現方法に若干の相違がある面白さ。
続編というより、スピンオフと比喩した方が似合うかもしれない。