十二月の俳句など

忘年の犬ぞ三歩で詩を詠まむ

圧力鍋秋夜の時間のぼりゆく

いま蝶に圧力鍋の理に

証明の猫や圧力鍋すずし

大同電鍋まひるをつくり変へる朧

敏雄忌の解凍肉の芯冷たし

R.I.P.チバユウスケ
肉みぢん冬渚とは鳥発つる

心音やナイフのごとく冬の凪

足あとのやがて羽撃きふゆの波

カレー黒く煮込まれありぬ龍淵に

暖房の天へカレーの香運ぶ

冬館とはカレーの匂ひ充満す

ふゆりんご磨きたるかわゆいパブロ

銅鑼焼に自社ロゴあるをボーナスと

年末賞与珈琲おごりあうて帰路

馬車来たり棺桶いつぱいのボーナス

ボーナスの連れてゆかれる戦地かな

カンダタの隠す年末賞与額

ボーナスと書かれてありぬ釈迦の指

天上天下唯我独尊年末賞与

ひとりとは鬼とゐること次郎柿

ドーナツの穴の切れはし十二月

サボタージユとは冬の日の独り占め

冬天やコーンのつぶの余さずに

賞与なき魂に増えたるスタツズよ

凩を巻きとるポツキー二刀流

政治家よ賞与無き身の軽ろやかさ

泰山の裏金鴻毛の賞与

賞与無き胸に弾丸撃ち込めよ

冬至南瓜むかしここいら勝間村

かむなぎのうすくありたる蒸南瓜

冬至なるひきこもり屋の一日かな

辞書を割るあなたを浮かむ鯨かな

冬雀スラツクスよりのぞく脛

引継ぎの終えて離れる枯野原

何処よりことば生まるる冬の海

毛糸編むいとよきことにこそあなれ

義父の死ぬまでの茶番をクリスマス

母来ませりクリスマスとは給料日

ふゆばれの窓を離れず姉妹

今よりは大和古都なる枯野かな

古民家が多いエリアや寒椿

イマジナリー門松門松と並び

条里制をよく残してゐますおでん

つるのこの造作なくあり冬の暮

揺籃の地をくゆらかす竜田姫

まほろばを寒柝のあなたへと帰る

山茶花の淡く桃色より白へ