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[report]『常設展』(国立西洋美術館)2025.2.6

※ この展示は2025年2月11日までです。
 国立西洋美術館は展示替えのため 2025.2.12.wed-3.10.mon の期間、全館休館になります。


開催情報

『常設展』
場所:国立西洋美術館(東京都台東区)
観覧料:500円(一般)

『コレクション・イン・フォーカス』
会期:20204.2.27.tue-2025.2.11.tue
内容:所蔵品による小規模な展示を取り込み、テーマ性 の高い物を解説パネルとともに展示。
・ルドヴィーコ・カラッチ《ダリウスの家族》初公開(本館2階)
・印象派とナビ派の装飾画(新館1階)
・ユディットとサロメ(本館2階)
・糸を紡ぐ女性の表象:カヴァッリーノとセガンティーニ(本館2階)

『冬季限定!キュレーターズ・ボイス2024』
配信期間:2024.11.26.tue-2025.2.11.tue
(自宅でも視聴可)

小企画展『オーガスタス・ジョンとその時代—松方コレクションから見た近代イギリス美術』
会期:2024.10.5.sat-2025.2.11.tue
会場:版画素描展示室(常設展示室内)


キャプション覚書

小企画展『オーガスタス・ジョンとその時代—松方コレクションから見た近代イギリス美術』

内容:世紀転換期イギリスの多彩な芸術動向や人的ネットワークの広がりに光をあてる。

・ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)
・スタンホープ・アレクサンダー・フォーブス(1857-1947)
・ウォルター・シッカート(1860-1942)
・松方幸次郎(1866-1950)
・ローラ・ナイト(1877-1970)
 20世紀前半のイギリスでもっとも高い評価を受けた女性画家のひとり。
・アルフレッド・マニングス(1878-1959)
・オーガスタス・ジョン(1878-1961)
 ウェールズ出身。姉は画家グヴェン・ジョン。白樺派を通じて日本でも紹介された。

【ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ】イギリス美術の信仰を目指して18世紀末に設立
【ニュー・イングリッシュ・アート・クラブ(NEAC)】1886年 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに対抗して設立。J.M.ホイッスラーが精神的支柱。
【カムデン・タウン・ウループ】NEAC の保守化に対して 1911年に結成。ウォルター・シッカートが中心。
【ニューリン派】スタンホープ・アレクサンダー・フォーブスを中核に、コーンウォールの漁村に芸術家コロニーを形成。第一次世界大戦が始まると、活動に終わりを告げる。

松方幸次郎は、1916-1918年のロンドン滞在中に30点を超えるオーガスタス・ジョンの作品を入手したが、油彩画はほぼ全て1939年の倉庫火災で消失、素描類は散逸した。
国立西洋美術館は、近年、購入や寄贈を通じてジョンの素描12点と版画2点を所蔵。

感想

人!人!人!
平日の朝に「ヒッ」と悲鳴が出そうになる前庭の大行列。
地獄の門に並んでいるようにも見えるが、大人気のモネ展への入場列だ。
ちなみにモネ展の特設ショップに入るのは、また別に寒空の前庭に並ぶ。

今回は、モネ展はスルーして常設展へ。
2月11日まで、国立西洋美術館の研究員自らが解説による『冬季限定!キュレーターズ・ボイス2024』が配信中なのだ。
アナウンサーや俳優・声優のガイドもいいけれど、研究員本人のガイドは、また別の魅力と説得力がある。
ぜひこれを聞きながら、作品を見てみたいと思った。
("冬季限定"って響きが、お菓子の限定品みたいで心トキメク)


『冬季限定!キュレーターズ・ボイス2024』
様々なジャンルから 12 の解説。
オーソドックスな作品や作者にフォーカスした解説から、その作品を誰が所有していたか、額縁についての解説など、バラエティがあり面白かった。
印象に残った作品を3点ピックアップ。

ルドヴィーコ・カラッチ《ダリウスの家族》

ルドヴィーコ・カラッチ(1555-1619)《ダリウスの家族》1591-1592年頃 油彩/カンヴァス

解説は研究員・川瀬佑介氏。
ダリウスとは、アレクサンドロス大王と戦って敗れたペルシャ王ダレイオス3世のこと。この絵に描かれているのは、ダリウスの妻や母。
この作品はもっと大きな横長の作品で、彼女たちの視線の先にアレクサンドロス大王が描かれていたが、何らかの理由で切断されてしまったのではないかと考えられているとのこと。
今は、そこにいない大王の姿を想像すると楽しい。


ラヴィニア・フォンターナ《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》【新収蔵】

 ラヴィニア・フォンターナ(1552-1614)《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》1595年? 油彩/カンヴァス

解説は学芸課長・渡辺晋輔氏。
一度見たら忘れられない絵。
「あッ!これ(雑誌で見て)知ってる!」と思ったが、家に帰って見返してみたら、バージョン違いだった。
私が雑誌で見たのはブロワ城美術館所蔵の絵で、見比べるとちょっと違う。
でも、これ、西美に来たのか!すごいな。
自らの出自を書いた紙を持たされた肖像画は、動物図鑑や囚人を連想してしまうが、描かれている少女の印象は可愛い。
くりくりした大きな目、にっこり微笑んだ薔薇色の唇、ふっくらした小さい手。
隣で見ていた人が「かわいいね。スターウォーズに出てくるのみたい。」と話していて、ああ似てるかも、と思ってしまった。イウォークのことだよね、きっと。
ちなみに、私が見た!と思った雑誌は「芸術新潮 2019年 3月号」特集:女たちの美術、p38 「中野京子が読み解く画家とモデル(出張版)」。
p41 にアントニエッタの姉マドレーヌの肖像(作者不詳)が載っているのだが、見比べると、この肖像画がすごく可愛く描いてあるのがわかる。


ギュスターヴ・クールベ《罠にかかった狐》

ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)《罠にかかった狐》1860 油彩/カンヴァス

解説は研究員で絵画・彫刻室長の川瀬佑介氏。(ダリウスの家族の解説の同じ方かな?)
おなじみの絵だが、2024年4月から額縁が変わった。
この額は松方幸次郎が作品を購入した時点で、本作を飾っていたと考えられるとのこと。
手間や破損などのトラブルを省くために、長い間、簡素で実用的な白木の平額で展示していたが、去年この額縁を修復し、この額での展示になったらしい。
そう言われると、この額の方がシックリくるような気がしてくる。
(言われなかったら、気づいたかなあ…)



小企画展『オーガスタス・ジョンとその時代—松方コレクションから見た近代イギリス美術』

No.11《イーディス・リーズ》の額(裏面)と裏板
《イーディス・リーズ》の来歴が感じられて興味深い。
あわせて関連地図の展示があり、松方が滞在したクイーン・アンズ・マンションやシェニル画廊、カムデン・タウンなどが記されている。
イギリスに行ったことがないのでイメージが湧かないのが残念だが、ふんわりと近さは分かった…ような気がする。

No.11《イーディス・リーズ》の額(裏面)と裏板


クリストファー・リチャード・ウィン・ネヴィンソン《波》
「青波(ブルーウェイブ)」?!と思った。

クリストファー・リチャード・ウィン・ネヴィンソン(1889-1946)《波》1917 リトグラフ、紙




その他、印象に残った作品から4点ピックアップ。

常設展 4 コレクション・イン・フォーカス
糸を紡ぐ女性の表象:カヴァッリーノとセガンティーニ

ジョヴァンニ・セガンティーニ《風笛を吹くブリアンツァの男たち》
なぜかこの絵がえらい刺さった。
ピヨピヨ駆けてくるヒヨコとか、左で演奏している男性の表情とか、右で音楽を聴いている女性の表情とか…
糸紬している女性は、昔、おばあちゃんがこんなカンジで編み物してたなあ…と、思い出した。
中央の白い子どもは、子どもというより精霊のようなものに感じられた。

ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858-1899)《風笛を吹くブリアンツァの男たち》
1883-85年頃 油彩/カンヴァス


常設展 2:《えんどう豆のネックレス》
ネックレスとイヤリングと指輪の3点セット。
これをつけて着飾った姿を見てみたい。
どんなドレスが合うかな〜などと、考えると楽しい。

《えんどう豆のネックレス》1982 ドイツ トルマリン、ジェーダイト、銀、鍍金


常設展 8:ジョン・エヴァレット・ミレイ《狼の巣穴》
自宅のグランドピアノを狼の巣に見立てて遊ぶ子どもたちを描いた情景。
…かわいい…

ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)《狼の巣穴》1863 油彩/カンヴァス


常設展 4:ヤン・ブリューゲル(父)《アブラハムとイサクのいる森林風景》
この額にこの絵が入っているのが好き。
この額、虫食いみたいな穴がいっぱいあいている。

ヤン・ブリューゲル(父)1568-1625《アブラハムとイサクのいる森林風景》1599 油彩/板




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