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[report]『所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.9.3–12.22)』(東京国立近代美術館)

※ タイトル画像 谷中安規《宴》(部分)東京国立近代美術館 蔵


開催情報

『所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.9.3–12.22)』
場所:東京国立近代美術館(東京都千代田区)
開催日:2024.9.3.tue-12.22.sun
入館料:500円(一般)

展示構成覚書

4階1室 モデルたちの生誕・没後数十年
 高峰秀子 生誕100年
 アルマ・マーラー 没後60年
 アルフレッド・スティーグリッツ 生誕160年
 アルチュール・ランボー 生誕170年
 フランツ・カフカ 没後100年

4階2室 明治時代の美術
 1880~1910年代(江戸時代が終わって20年後からの30年間)
 ヨーロッパ標準と国のオリジナリティを融合し、新しい時代の日本美術を生み出すための試行錯誤。

4階3室 開発される土地
 明治維新以降の近代化
 1923年 関東大震災→復興
 芸術家の個性が重視された時代

4階4室 夢想と自由とー谷中安規の世界
 谷中安規(1897-1946)「風船画伯」

4階5室 シュルレアリスム100年
 アンドレ・ブルトン(1896-1966)が「シュルレアリスム宣言』を発表してから100年。
 福沢一郎(1898-1992)
 マックス・エルンスト(1891-1976)
 ジョアン・ミロ(1893-1983)
 イヴ・タンギー(1900-1955)
 瀧口修造(1903-1979)


3階6室 「相手」がいる
 戦争には相手がいる。人は、敵対する国の人々をどのように捉えているか。

3階7室 プレイバック「日米抽象美術展」(1955)
 1955年国立近代美術館(東京・京橋)で開催された「日米抽象美術展」を」振り返る。

3階8室 生誕100年 芥川(間所)沙織
 芥川(間所)紗織(1924-1966)
 岡本太郎、池田龍雄、石井茂雄、河原温、奈良原一高、桂ゆき、ルフィーノ・タマヨ

3階9室 清野賀子(1962-2009)
 前期(9.3-11.10):「The Sign of Life」
 後期(11.12-12.22):「a good day, good time」

「物が、人が、在るがままに立ち上る瞬間がある。もう少し詩的に言ってしまえば、夜が夜より夜らしく、風が風より風らしく写るということがある。そんな瞬間が好きなんです」

清野賀子

3階10室
 前期(9.3-11.10):アール・デコの精華/歴史の描き方(神話や歴史をテーマにした日本画)
  ルネ・ラリック(1860–1945)
  高村豊周(1890–1972)
  内藤春治(1895–1979)

 後期(11.12-12.22):アール・デコの精華/線にもいろいろある(線がいろいろな日本画)
  ひらがなを書くような柔らかい線(やまと絵)→吉川霊華
  針金のようなツーとした線(鉄線描)1920年代〜(やまと絵)→小林古径
  かすれても途切れても平気な感じの線(南画風、新南画風)→今村紫紅、石井林響


2階11室 Lines and Grid
 ソル・ルウィット(1928-2007)と同時代にニューヨークで活躍したアーティストを中心に、線とグリッドが内在した表現を紹介。

2階12室 ドローイングの生命


2階ギャラリー4 コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」
 1.マスメディアとイメージ
  1960~70年代 テレビの普及
  「主婦」「母」「男らしさ」「女らしさ」
 2.個人的なこと
  1960年代 ヴィデオ・カメラの登場
  個人の声をダイレクトに伝える
 3.身体とアイデンティティ
  1960-70年代 パフォーマンス・アートの登場
  芸術において身体への関心が高まる
 4.対話


感想

10月3日寄り道のリベンジ。
終了間際の駆け込みになってしまった。

ジャンルが広く作品数も多いため、感想文の収集がつかなくなりそう。
特に印象に残ったもの3つと次点のみ記録する。
元気と集中力は徐々に低下していくので、やはり前半のほうが印象が強い。


特に印象に残ったもの、その1:川端龍子《草炎》(4階1室)

ここは展示のスタートなので、「つかみはOK?」的作品が展示されている気がする。
前回の中村岳陵《豊幡雲とよはたぐも》にも掴まれたが、今回もハートを鷲掴み。

川端龍子《草炎》1930
全く美しさが伝えられない写真で残念

紺地に金泥。
描かれているのは、いわゆる雑草。夏にその辺に生えきて、油断するとアッというまに覆い尽くしてくる、お馴染みの植物たち。
キャプションには「夜でしょうか。灼熱の昼間でしょうか。正解はありません。」とある。
私には灼熱の昼間、草の生命力だけが映る特殊なレンズで見ているように感じた。

川端龍子《草炎》(部分)1930

川端龍子は3階10室に《金閣炎上》、2階12室にスケッチ帳の展示もある。


特に印象に残ったもの、その2:谷中安規特集(4階3室)

今回のメイン・ターゲット。
内田百閒『王様の背中』を読んで以来、谷中安規ファンです。
この世と異界の狭間感がたまらん。

谷中安規作品は前期から総入れ替えだった。
作品リストを事前にチェックすべきだった。
写真を全て貼り付けたいところだが、キリがないし実物にも遠く及ばないので2枚で我慢。

谷中安規《竜の夢(ドラゴンズドリーム)》1939
美女と黒電話と金魚鉢と龍という謎の組み合わせ
誰の夢なのだろう
谷中安規《竜を撃つ》c.1936-39
"龍"と"竜"は違うのか?


特に印象に残ったもの、その2:シュルレアリスム100年(4階5室)

4階3室のレトロな光景から4室で異界の扉が開き、5室でシュルレアリスム絵画という流れがとても好き。

浜田浜雄《ユパス》1939

「ユパス」とは作者によればジャワ島原産の植物で猛毒をもち、この木の上を飛ぶ鳥は落ち、周囲は荒地と化すという言い伝えがあり、転じて害悪の比喩として用いられるといいます。

展示室キャプションより
北脇昇《独活うど》1937
うわー、ウドだ!ウドが歩いてるよ!と、喜んでしまった。
…ウド…一年に1回くらいは食べたいかな。
2階12室に北脇昇のスケッチもあるよ
岡上淑子《長い一日》1951


次点:3階10室 線もいろいろある

手前のルネ・ラリックも素敵だが、奥の線特集が楽しい。

今村紫紅《春さき》1916
南画をヒントに「ゆるい」絵を描いた、とのこと。
見た時はそれほど印象に残らなかったが、後からジワジワきている(現在進行形)。
速水御舟《宮津》1915 新収蔵作品
今村紫紅の影響を受け「新南画」風に描いた作品…とのこと。
初見で「いいなー」と思ったのだが、キャプションに「人を食ったようなゆるさが魅力」とある。
"人を食ったようなゆるさ"なのか、これは。"人を食ったようなゆるさ"って何だ?
小林古径《紅梅》1943
銀色に感じられる木の幹と、パキッとしたピンクの梅と緑の葉が「かわいい」。
この作品「東京国立博物館管理換」とある。
制作年代でトーハクか東近美か、管理が変わるらしい。
このへんの年代の人は、どちらにも作品があるから紛らわしい。
前田青邨《かちかち山》1947
綺麗な線だなあ…

全然言い足りない

2階11室 奈良原一高《ブロードウェイ》
魚眼レンズをつけたカメラを交差点の歩道の角に据え、対面する角を撮影し、写真4枚で構成。
曼荼羅のような、街の"開き"のような…
「街路によってグリッド状に区画されたマンハッタンを南北に斜めに貫くブロードウェイは、17世紀の入植以前から先住民が使っていた小道に由来する」(キャプションより)
2階12室 古賀春江《《窓外の化粧》のための下絵》
2階12室 川端龍子《スケッチ帳》 古賀春江《スケッチブック》
何が分かるわけでもないのだが、スケッチを眺めるのが好き。
3階8室 石井茂雄《戒厳状態》1956
不穏だ。漂う終末感。


その他、メモ…
4階2室 狩野芳崖《仁王捉鬼図におうそっきず》←フェロノサの指導
4階2室 菱田春草《林和靖りんなせい》「朦朧体」(輪郭線をなくして色をぼかす表現)による初期作。日本画でも空気や光の拡散する様子を表そうとした。
4階5室 マックス・エルンスト《砂漠の花(砂漠のバラ)》新収蔵
4階5室 イヴ・タンギー《聾者の耳》
4階5室 浅原清隆《郷愁》作者故郷・兵庫県播磨の海岸の夜
3階8室 池田龍雄《見張り(「禽獣記」シリーズ)》 
2階12室 北脇昇の素描←村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』の挿絵
2階12室 坂上チユキ。今回は(単眼鏡で)シッカリ見れた。顕微鏡で微生物を見るよう。
2階12室 川田祐子《A THOUSAND WINDS》離れて見ると、モコモコしたカビっぽいものに見えた。近づくと短い毛が生えているように見える。不思議な作品。

小企画「フェミニズムと映像表現」を見るのが最後になってしまい、やはり全然時間が足りない。
遠藤麻衣×百瀬文《Love Condition》が、女子会のようでSFのようで、それでいて一緒に「…なんでこの形なんだ?」とも考えてしまったりもして面白かったのだが、75分全部見るのは時間的に厳しい。


東京国立近代美術館は、2024年12月23日〜2025年2月10日まで休館。
2月11日からコレクション展と小企画「フェミニズムと映像表現」が予定されている。



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