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[report]『マルセル・デュシャンを考える』(カスヤの森現代美術館)

※ タイトル画像 
左:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 私の解釈》
中:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 完成時の姿》
右:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 一般的解釈》


開催情報

『開館30周年記念 マルセル・デュシャンを考える』
場所:カスヤの森現代美術館(神奈川県横須賀市)
開催日:2024.9.5.thu-11.10.sun
入館料:800円(一般)

内容:
マルセル・デュシャンの作品と共に残された様々な謎や意図について改めて考察を試みる。謎解きに挑んだ若江漢字の絵画や立体作品、マルセル・デュシャンの版画作品や資料を展観する。

主な登場人物

  • マルセル・デュシャン(1887-1968)
    フランス、ノルマンディー地方ブランヴィル・クルヴォンに生まれる。父は公証人。81歳で死去。墓碑銘「されど、死ぬのはいつも他人」”D'ailleurs,c'est toujours les autres qui meurent.”。

  • ヨーゼフ・ボイス(1921-1986)ドイツ、クレーヴェ

  • 松澤ゆたか(1922-2006)長野県

  • 宮脇愛子(1929-2014)東京都

  • ナム・ジュン・パイク(1932-2006)韓国、ソウル

  • 李禹煥 Lee Ufan(1936-)韓国、慶南

  • 若江漢字(1944-)神奈川県横須賀市

  • 若江栄戽はるこ(?-)
    「カスヤの森現代美術館」館長

関連ページ

↓ カスヤの森美術館の公式YouTube 2024年10月6日に行われたトークイベントの様子。若江漢字氏が「大ガラス」や「遺作」について独自の解釈を交えて解説。(1時間34分)

↓ 瀧口修造、東野芳明の監修で制作された『大ガラス』レプリカ 東京版が展示されている。

↓ ドラぷら(NEXCO東日本)「未知の細道」の「カスヤの森美術館」の紹介記事
 No.113(文:川内有緒 2018.3.10)


章構成覚書

第1展示室:
 1F「マルセル・デュシャンを考える」
 M2F:ヨーゼフ・ボイス
第2展示室:宮脇愛子、若江漢字
ROOM1:松澤宥
ROOM2:若江漢字
ROOM3:ナム・ジュン・パイク、李禹煥

感想

「カスヤの森現代美術館」は、最近読んだ本(藤田令伊『「わからない」人のための現代アート入門』)に神奈川県の美術館として紹介されていたのを見て知った。
調べてみると面白そう。ピアニスト高橋アキさんがコンサートを開催したこともあるらしく、これはぜひ行ってみたい!と思ったのだが…私のデュシャンに関する知識は「便器を逆さにして”泉”ってやった人?」程度だ。
…行っても全然わからないんじゃないか、と、不安になる。
でも、「ダレソレ」状態で行った呉昌碩展も行っておいて良かったと思うし、わからないまま感じたことも覚えておきたいと思う。
最悪、お庭を楽しもう、と、天気が良い日に行ってみた。


第一展示室
デュシャンて、何作ったんだっけ?と、思ったが、本人がミニチュアレプリカBOXセットを作っていた。親切デスネ。↓

『Boîte-en-valise』(トランクの中の箱)レプリカ

今展のメインは「大ガラス」の若江漢字解釈の展示。
「遺作」の資料と若江漢字解釈版もあった。

Marcel Duchamp 《The Bride Stripped Bare by Her Bachelors.,Even》 通称:大ガラス(模型)

デュシャンは大のチェス好きだったことを受けてか、「大ガラス」下段左の「9つの鋳型」をチェスの駒にした展示があった。

若江漢字《九つの木型》
手前:若江漢字《チェス》鉄、真鍮
奥:若江漢字《チェス》アルミ、真鍮
かっこいい。銃弾ぽくも見えるが、エロティックなものにも見える。
左:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 私の解釈》
中:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 完成時の姿》
右:若江漢字《「大ガラス」補注ー3つの解釈 一般的解釈》
展示室に入って、まず目につくのがこの展示。

今回の企画のメイン展示は上の3枚なのだが、ウーン、わかるようなわからんような、いや、あんまよくわからんかも…と眺めていたら、ナント!
若江漢字氏ご本人が、知り合いの方を案内しにいらした!
館長さんが一緒に聞いても良いですよと声をかけてくださったので、ありがたくご一緒させていただきました。僥倖!
イヤー!作者自らの解説の説得力、すごい!「へぇー」「ほおー」「そうなんだ!」の連続。
10月6日にトークイベントが開催されたそうで、後日、公式YouTubeにアップされるとのこと。楽しみ!

中二階はヨーゼフ・ボイスの展示。
ボイスは名前すら知りませんでした申し訳ありません。
一人で見ていた時には「かわいいけど…なんで電球にレモン?」と思っていたのだが、若江氏の解説を聞いて「あっ!そうなんだ!」と思った。
…解説パネルは、ほとんどないので、一人で知識ゼロだと難易度高い。
でも、第一〜第二展示室で、一人ぼんやり眺めていると、館長さんがそっと声をかけて軽くガイドしてくださるので、知識なくてもなんとかなる…かな。
(ROOM1〜3は独りでガンバル)

ヨーゼフ・ボイス《カプリ・バッテリー》他
中二階の奥にひっそり展示
レモンの酸性成分が微弱な電流を発生させ、バッテリーとして電球に光が与えられる…らしい
たま〜〜〜〜〜に、ピカッと光るらしい
遺作らしい

第二展示室の先は、図書コーナー。

個人のお宅の本棚の雰囲気
楽しいけど、手前の本以外は手に取りにくい
本棚の反対側
コピー機、ポスター、他館のチラシなど…
ボイスのポスターが一際目を引く

ショップで過去の展覧会の冊子を買った。(400円)
今回のとは少し違うけど、「大ガラス」を解読する若江氏の足取りが垣間見えて面白い。

『若江漢字・解読された「大ガラス」展』2015年 小冊子
スケッチ、下書き、設定資料が大好き
『若江漢字・解読された「大ガラス」展』2015年 小冊子(表紙)
今回は購入しなかったが「遺作」の小冊子もあった。



250体の羅漢像が配された竹林の散策路。
宮脇愛子《うつろひ》やボイスの足型、稲荷宮もある。
途中に休憩できるベンチあり。

『誰かである 誰か』
散策していると、自分に貼り付いていたラベルや役割のようなものがペリペリ剥がれていくよう
11月なのに意外と虫がいる。
蚊もいた。…やっぱり夏はいっぱいいるのかな。



次回予告(カスヤの森現代美術館)

『開館30周年記念 李禹煥(Lee Ufan) 合間の遊作』
2024.11.23.sat-2025.2.23.sun

※ 2024.12.1.sun-12.7.sat:臨時休館
※ 2024.12.23.mon-2025.1.3.fri :冬季休館



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