ユーカリ

木の葉が火を呼ぶ理由

2019年9月ごろに発生し、2020年2月半ばまで続いたオーストラリアの森林火災。
逃げ惑うカンガルーや火傷を負ったコアラの映像が連日放送され、ご記憶の方も多いと思います。
焼失面積はおよそ1千万ヘクタール(東京都の50倍、北海道の面積を上回ります)。こんな大規模な山火事が長期間続くというのは、日本ではあまり想像ができないことです。

この地域で山火事が多いことには理由があります。
勿論、気候変動は山火事の大規模化や頻度が増えた一因ではありますが、「そもそもこの地域は山火事が多い」のです。

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というわけで、今回は「オーストラリアの山火事」について、少し触れてみたいと思います。


1,「乾燥大陸」オーストラリア

オーストラリアでは、毎年夏にあたる12月ごろから山火事の頻度が増加します。
その根本的な理由は「乾燥気候であること」です。

オーストラリア大陸は、南回帰線の直下にあり、大陸のおよそ8割が乾燥気候に属します。

回帰線

※濃い青の線が回帰線

南北回帰線の直下は、「亜熱帯(中緯度)高圧帯」呼ばれ、年間を通して高気圧に覆われます。つまり、圧倒的に晴れの日が多いのです。
北回帰線が通る場所をざっと挙げると
・サハラ砂漠 ・アラビア半島 ・大インド(タール)砂漠
などなど。
南回帰線であれば
・オーストラリア大陸 ・アタカマ砂漠 ・ナミブ砂漠
など。
有名な砂漠は、ほとんどこの高圧帯の直下にあります。

そして、乾燥+高温の環境下で葉や枝が擦れて樹木が自然発火し、山火事になるケースがあるのです。
確かに、木材や木くずを高速ですり合わせると火がつきますよね。火おこし

を経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。


2,でも日本では…

日本では、それほど高頻度に大規模な山火事が発生するイメージはありません。
太平洋側の夏季は高温多湿なので、山火事は発生しづらくなっています(むしろ火事は冬季に多いですよね)。

一方、日本海側は夏季になると「フェーン現象」

により火事が発生しやすくなります。
その対策として代表的なのが、延焼を防ぐためにバラバラに住居を構える「散村」

散村

や、風が吹きつける側を樹木でガードする「屋敷森」

屋敷森

です。


3,火を呼ぶ木の葉

オーストラリアで大規模な山火事が起きやすい大きな理由は、その植生にあります。
オーストラリア大陸で有名な植物として、「ユーカリ」がありますね。

ユーカリ

コアラのえさとしても有名です。
葉には毒がありますが、コアラはそれを無害化できます。こうして植生が乏しい環境下でもえさを確保してきました。
そしてこのユーカリ、面白い特徴を持っています。
それは、「非常に油分が多い」こと。何と、葉からガス状の油分が立ち上っているのです(ユーカリの森では火気厳禁!)。
なぜそんなに油分を蓄える必要があるのか…というと…そこには驚くべき生き残り策が隠されていました。


4,まさかのセルフ焼畑

乾燥が強い地域は一般的に植生が乏しくなります。
さらに、微生物の活動も不活発です。
材料も乏しく、分解者も少ない=腐植が形成されにくい…つまり、土壌に栄養分がたまりにくいと言えます。
しかし樹木は、生存のために多くの栄養分が必要です。
そこで、ユーカリは栄養分を確保するために驚くべき進化を遂げます。

土壌に栄養分が少ない地域の農法で、「焼畑」というものがあります。

植物を燃やし、その灰を栄養分として農業を行うのです。

環境破壊の元凶のように扱われることがありますが、本来は植生の再生サイクルに従って行われる、自然と共生する伝統農法です。

何となくピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そう、何とユーカリは、燃えやすいようにわざと油分を立ち上らせています。
そして、幹の部分は耐火性が高く、その種子は火災による熱が加わると初めて殻がはじける。つまり、山火事が起きることを前提としたつくりをしているのです。

自分の葉を燃やして焼畑をし、他の植物を焼き尽くした上に、その栄養分で成長する…生物の進化は想像を絶するものですね。


というわけで、今回はオーストラリアの山火事とユーカリのお話をしてみました。
皆さんのご参考になれば幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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瀧波一誠
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