イーネオヤ

新婚旅行で行ったトルコで「イーネオヤ」という手芸にハマり、密かにミンネで販売しております。
何年か前に登録し、販売件数ゼロの記録をどこまでも更新中。←

イーネはトルコ語で針、オヤは縁飾りという意味があります。

トルコはイスラムの国なので、女性は髪を隠します。
といっても戒律はユルユルなので、街を歩く現代女性は我々と変わらない服装の人も多いです。
隠すのは、モスクの中。礼拝中は今でもあたり前に髪を隠します。

髪を隠すために被るスカーフの縁をかがって、飾りをつけたものがオヤです。

今ではオヤは縁飾りだけでなく、お土産用にネックレスなどのアクセサリーに仕立てたものもたくさんあります。
最古のイーネオヤだけでなく、トゥーオヤ、メキッキオヤなど作り方の異なる新しいオヤも人気です。

オヤはモチーフごとに意味があります。
嫁姑というのは昔から根深い問題のようで、言いたいことを言えないお嫁さんが、スカーフのモチーフでお姑さんに文句を伝えることもあったそうです。

たとえばトウガラシのモチーフは「機嫌が悪い」です。話しかけてくんなって感じでしょうか。
他にも、オヤには気分を表すモチーフがたくさんあります。
イスラムでは劣位とされる女性同士のコミュニケーションツールになっていたんですね。

名前の通り、イーネオヤは針一本で編むオヤ。レースのように平面の技法も、立体を編むための技法もあります。
レースの発祥とも言われる古い手芸なので、技法は単純ですが、とにっかく面倒くさい!

かぎ針なんかと比べると、編むのに時間がかかるし、糸替えも頻繁にあるし、間違えると目を解くのが大変だし。かつては糸を撚るところから始めなければなりませんでした。

今はさすがに糸は買えますが、自分でやってみて、まぁ採算の合わない手芸だなと。作り手が激減しているのも頷けます。

でも、とっても魅力のある手芸なんです。

昔のトルコ女性は女の子を出産すると、その子が赤ちゃんのうちからお嫁入り道具にするためのオヤを編み始めました。

今よりずっと子どもの生存率が低かった時代です。
お母さんたちは小さい我が子の傍ら、どんな思いでオヤを編んでいたのでしょうか。

「この子の花嫁姿を見られますように」
「大人になるまで生きられますように」
「もしも病気になったら?」

それとも、オヤを編んでいる間は不安をわきに置き、無心になれたのでしょうか。
ご近所さんが大勢で集まって、お互いにオヤ自慢をしながら編むことも多いので、無心は難しかったかな。

何にせよ我が子の安寧を願う、大切な時間であったことでしょう。
とくにアンティークなオヤからは、硬く結んだひと目ごとに、祈る気持ちが滲み出ているような気がします。

きっと、未来を心待ちにする日だけではなかったと思います。
先のことなんて分からないのに、なぜ大変な思いをして作っているのか、時間の無駄と感じた日もあったでしょう。

それでも、淡々と編みつづけた日々。まるで人生の縮図です。そんな歴史を垣間見ることができるのも、イーネオヤの魅力だと思います。

私のオヤは勝手に創作したものもあるので、トルコのオヤとは雰囲気が違うかもしれませんが、もしよければトップページの「ショップ」タグから覗いてみてください。

販売件数ゼロ記録を塗り替えるのは、あなただー!!!!

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