動物園と呼ばれた店(1)

18歳で就職した
職場はケーキ屋さん
毎日毎日ニコニコしながら地下の食品売り場で朝から晩までずっとニコニコしていた

良い人を演じるのも理不尽に怒られて謝るのも誰が聞いても文句なしに綺麗な言葉遣いで話すのもすごくストレスだった

毎日毎日売り場のショーケースを全部割ってやりたかったし焼き菓子を全部無心で粉々にしたかったしお釣りも投げて返したかった

今思えば向いてなかったんだと思う

辞めたいけど辞めるって言えないなぁと思っていた頃友達(ニート)から良いバイト見つけたんだけど一緒にバイトしない?と誘われた
「バーテンダー募集」の文字を見ていいなと思った
寡黙なマスターがシェイカーを振るシーンが浮かんだ

めちゃくちゃかっこいい

お酒の事なんて何も知らないけど、どうにかなるでしょう!私はバーテンダーになる!と意気込み、とりあえず面接行こう!と早速電話をした

当時の職場がもちろん副業禁止だという事は頭の片隅に一瞬だけ浮かんだが気にしなかった(気にした方が良かった)


面接当日、面接を担当した店長は100キロを超えるであろう大男で私の想像していたバーテンダーには程遠かった

私は面接されながらパンダと喋ってるみたいだなぁと思っていた

とりあえず1日働いてみようかと即採用
ちょうどその時「おはようございまーす!」と元気に出勤して来た女性がいたのでこの人にバイト内容を聞く事になった

この人はスタイルが良くて目が大きくてミーヤキャットみたいだった

更衣室にて
ミーヤキャット「お喋り得意なの?」
私「え?お喋り?」

ミーヤキャット「??」
私「??」
ミーヤキャット「えっと、、、、店長?仕事内容言ってないの??」
パンダ店長「あー書いたら人来んから書いてない」
私「は???」
ミーヤキャット「うちはバーだけど落ち着いた感じじゃなくて結構お客さんとのお喋りメインのバーだよ」
私「は??????」
ミーヤキャット「えー!?知らなかったのぉーーー???」
ミーヤキャットがわざとらしく叫ぶ

数年後この出来事についてミーヤキャットに尋ねると「ん?覚えてなーい」と誤魔化されるのだがこの時の私はというと理解が追いつかずぽかんとしていたと思う

私「ひ、ひ、ひ、人見知りなんで帰ります」

のちにこのバイト先が私史上最も長いバイト先になるとはこの時まだ知る由もなかった。

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