この世に「脈アリ行動」など存在しない
28歳にもなって告白して振られるという、非日常的なことが降り掛かってくるとは思わなかった。
恋愛経験の少ない私だが、恋愛のイロハどころか、irohaの使い方まで分かっている。
勝算の無い勝負を仕掛けるほどの若さも無い。
つまり、本当に勝算がある、付き合えると思っていたのだ。
条件はそこそこに揃っていた。
・恋活アプリで出会って3回目の食事
・前回、遊び目的なら会わないと伝えている
・話は尽きず、5〜6時間一緒にいれる
・手を繋ぐ→ハグまではしている
・2ヶ月毎日長文のLINEをしている
・好き、会いたい、という言葉があった
・前日の夜も1時間ほど電話をしている
いや、これ脈アリじゃなかったら、本当に何だったんだよ。と私は頭を抱えている。今振り返っても、どう考えても勘違いしてしまう行動をとられていたとは思う。
世の「脈アリ行動」って記事ほぼ網羅したんじゃないかというくらい検索履歴が恥ずかしいことになっている今、
この世に「脈アリ行動」なんて無いんじゃないかとすら思っている。
広告のトラップが敷き詰められている恋愛コラムによると、デート3回目はほぼほぼお付き合い確定、みたいなこと書いてあるんですけど!
長文&毎日のLINEも脈アリらしいし、帰り際のハグも脈アリだって、書いてあったのに。
2回目のデートの時、ハグをしてきた彼に私はストロングスタイルでこう言った。
「誰にでもこんなことするんですか?」
「遊び相手なら私じゃないと思います」
「私めっちゃ鉄のパンツです」
「付き合うまでは粘膜の接触NGです」
「私のことどう思ってるんですか」
泣く子も黙るストロングスタイル。
28にもなって、キスを渋るなんてイカれていることは分かっていた。しかし、28だからこそ、今まさに、真剣な恋がしたいのだ!
彼はそれに対し、
「遊び目的じゃないし、結構好きなんだけど、
まだ会って2回目だし、なんて言っていいか悩んでいる」
と言った。
無論、帰りの電車の中で私の検索履歴は「結構好き とは」関連で埋め尽くされることとなる。
散々ストロングスタイルを決め込んだ私に、
帰り際もまた会いたいと言ってくれた。
あれ、この人真剣なのかな……?そしたら私も真剣になってもいいのかな?
いやでも、口だけだよな……どうせ誘ってこないよ。
そんなことをぐるぐる考えながら、私は帰りのホームで少しだけ泣いてしまった。
今思えば、この時点で普通に好きだったんだと思う。
私の好きを制御していたのは、「次こそちゃんとした人と付き合い将来を見据えたい」という明確な焦りがあったからだ。
絶対来ないと思っていた誘いは、その日のうちに来た。
遊びなら会わない、と言ったあと誘われたということは、真剣だということだ。
次のデートは、完全に付き合う流れだと勘違いしていた。
3回目のデートの終わり際、カラオケでハグされたあと、気持ちが昂った私は「好きです」と言った。
そして、
「まだ、結構好きのレベルは変わってないですか」
と聞いた。
きっと、俺も好きだよ、付き合おう、と言ってくれると信じていた。
「今すぐ付き合うほどは、好きじゃないんだよね」
そう言われた瞬間は意味が分からなくて、
ショックのあまり、その日の記憶が飛んでしまっている。だからところどころは、正しくないかもしれない。
彼は、これからも友達としてお互いのコミュニティを紹介して会うのはどうかと言った。
私は、アプリで出会ってるんだからそれは無理じゃない?そっち、キスとかするじゃん、と嫌味を言った。
「何で、キスしたの?」
それに対して彼はこう言ったのだ。
「いや、して欲しそうだったから」
その言葉に、私は何て男の見る目が無いんだろうと、絶望してしまった。こんなクソみたいな言い訳あっていいものなのか……。
そのあと、私は徒歩で家まで帰れる駅だったので、彼を駅の改札まで送り届けた。
「こんなに面白くて良い子一生現れないから、絶対後悔するよ。」
そう呪いの言葉を吐き捨てて。
彼は、確かに面白さは1番だわ、と言った。
良い子かどうかはわからないけど、と。
今までありがとう、と彼は手を振った。
改札入るのを見届けたあとすぐに私は背を向けた。
そして、とぼとぼ、元来た道を歩いた。
いや、普通の女はな、こんな思わせぶりな行動されたあと振られた男を駅の改札まで送ったりしないから。
大体1軒目の店の掘りごたつでめっちゃ足絡んでたじゃんか。忙しいと思ったから、店の予約もしたし、
奢ってもらわなくても全然気にしてなかったし。
テーブルの奥の席に自分で座っても、ああ、まともな女と付き合ってきてないんだな、って流してあげていたし。
こんな良い子なかなかいないんだから。
ぐるぐるとそんなことを考えながら、帰っていたので、
どうやって帰ったか記憶がほぼない。
帰り道は、振られた、と自ら友達にLINEをしたにも関わらず、友達が詳細を求めてきたら、いやまだネタにできるほど消化できてない……という、抜群のメンヘラ具合を発揮してしまった。
深夜2時頃、ふと目覚め、謎の震えが止まらなくなり、泣きながら失神するように寝た。
それくらい、ショックだった。
私は、10年振りに、人に告白をした。
心臓が破裂しそうだった。
やっと幸せになれる、そう信じていた。
2回目のご飯の時。
「いやー。こんな仕事も順調で幸せで大丈夫かなって。
私って幸せが似合わないんですよね」
そう言った私に、彼はゲラゲラと笑いながら言った。
「どんな不幸な人生送ってきたの?
幸せになっていいんだよ」
カウンター席で、隣にいる彼がこっちを見ていることは分かっていたけど、
嬉しすぎて、顔を見ることができなかった。
私は何て返せたかも覚えてないくらい、涙を堪えるのに必死だったのだ。
この人に好きになって貰えたら、今までの辛かった人生笑い飛ばして、全肯定できるかも、と思った。
彼の言葉に、救われていたのだと思う。
どんな気持ちで、彼は私と会っていたのか、考える。
家に誘われたわけでも、ホテルに連れ込まれたわけでもない。ただ、沢山のハグと1回キスをしただけ。
どんな気持ちで、私に結構好きと言ったのか、考える。
どんな気持ちで、幸せになっていい、って言ったのか。
呪いの言葉をかけたつもりが
ひとつひとつの言葉に、縛り付けられているのは私の方だった。
悔しいくらいに、何かの拍子で思い出しては、泣きそうになってしまう。
もしかしたら、私の何かが違えば、幸せな未来があったんじゃないかと考える。
私はすごく尖っていた。
それを隠すように社会人になり、コミュニケーションという武装を身につけた。
誰とでも仲良くなれるようになった。
誰とでも話せるようになったら、逆に誰も合わないと思うようになった。
心から合うと思えたのは、社会人になって初めてだった。
でも、私が合うと思っていただけで、
きっと彼は私以上に誰にでも合わせられる人だったのかもしれない、とも思う。
観てきたアニメや、好きな音楽、お酒も、旅行も、仕事の話も、全部、合わせられる人だったのかもしれない。
そう思うと、私が感じていたシンパシーは全くの意味をなさないのだ。
失恋したあとは、自分はやっぱりダメだと、ひたすら自責の念に駆られたが、
彼が思わせぶりなサイコパスだった、ということにして、とりあえず男の傷は男で埋めようと、アプリを再開した。
でも、誰とやり取りをしても、やっぱり、彼が1番楽しかった、と思ってしまう。
本当に本当に好きだった。
どうしていいかわからないくらい、好きだった。
全然モテないよ、と言った私に、
彼は「そんなに面白いのに?」と言った。
「面白いって言われるのが1番嬉しい」
そう言った私に、彼は嬉しそうに、
「関東の人は面白いことに対しての価値が分かってないから。今、そう言われたの聞いてじーんとしてる」
と言ってくれた。
面白くて、変わってる人が好きだ、と言ってくれた。
そして今まで会った人の中で1番私が面白いと言ってくれた。
今でも正直あんなに合う人はいるのかと思うくらい、好きだし、
「自分以上に面白い子おらへんわ、付き合お」
ってLINEが突然来ないかなーとかいう、くだらない妄想を考える。
彼は、私の最後のLINEに、ごめんねとありがとうしか、くれなかった。
彼より合うと思う人はいないかもしれない。
彼より面白い人はいないかもしれない。
だけど、彼より私を大切に思ってくれて、
誠実な人はいると思う。
そう思って前に進むしかないと思うのだ。
もう少し若かったら、なりふり構わず好きでいれたかな。
そう思っても、私はやっぱり28歳のままだ。
もう、頭でする恋愛しかできない。統計学に頼りたくなって、すぐに検索を繰り返してしまう。けど、感情ってナマモノだから。だから、脈アリ行動なんて、存在しない。
思わせぶりな態度や言動も、自分がどう受け止めたかで、話は変わってくるし、結局同じパターンなんて、一通りも無いんだと思う。だからどちらかが悪いとかでもないし、正しい訳でもないんだと思う。
だけど、自分を責めて病んでしまうよりは、相手がおかしいわ、私みたいな良い子振るなんて。って思う方が精神衛生上良いよな……ごめんな悪者にさせてな……って心の中で謝りながら悪者にしてしまっている。
でも、そんな悪い人を自分が好きになるわけがないことも、分かっている。
付き合って、体の関係を持って、
捨てることも出来たのに、それをしなかった彼は、私が想定しているより誠実だったということにしておこう。
まだまだ人を好きになれるよ、と私に教えてくれるために、私の前に現れてくれたのだということにしておこう。
彼がくれた言葉を、呪いじゃなくて、希望にできるかどうかは私次第だと思うのだ。
幸せになっていい、と言った彼が、
私を幸せにしてくれる未来を、夢見た。
別に何をして欲しいわけでもなかった。
彼と話しているだけで、私は幸せだったのだ。
一緒にいるだけで、良かったのだ。
だけど、彼は私といることに幸せを見出さなかった。
単純に、私をそこまで、好きじゃなかったから。
それだけのこと。
絶対絶対、大好きな人と家庭を持って、幸せになりたい。
私といると1番楽しいって、1番幸せだって、言ってくれる人と出会って、一生一緒にいて。
子供ができて、週末は家族みんなで色んなところに遊びにいって。くだらないことで笑って、たまにあるご馳走にはしゃいで。
なんでもないことにみえて、私が経験したことがないことを全部やりたい。
だから、幸せが似合わない、なんてもう二度と言わない。
▼失恋した彼とのその後のNoteはこちら
▼人を好きになるタイミングのNoteはこちら
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