霊能者さん

あれはまだ長女が白狐の百が見えるようになる直前の事。
私はどうにか同じような能力の人の情報などが欲しくて悪戦苦闘してた。
その日はたまたま開いたSNSで、今夜は○○さんの相談会やってます…というような全国を回っている霊能者さんが来ているという投稿を見つけて
すぐさま家を出た。
23時だった。
そのBARに着いたのは23時半頃。
終電前で店に残っていたのは、霊能者さんとお店の人一人と女性のお客さんが一人。
霊能者さんはまさに帰るところだったが、これも縁だとカウンターに座り直した。
女性のお客さんも交えてある程度会話した後、霊能者さんは名刺を差し出しながら、ここの地域の担当はこの人だからここに連絡してね!と帰っていった。
正直あまり手応えを感じず、けれどもモヤモヤとするので、女性のお客さんを送り出した後お店の人と話した。
あの人には会える人しか会えないし、だいたい会う人は中に入ってる。
中に入ってる人は、さすがに自分も毎月見てるから目を見るとすぐわかる。
でもあなたは今まで見てきた入ってる人とかんじが違うから正直わからない。
そんな事をお店の人は言った。
『中に入ってる』というのは、例えば前世で人の旦那さんを奪ってしまってその奥さんが恨んだまま亡くなり、この世に魂ごと残ったまま彷徨っていたら、生まれ変わったその人を見つけ一般的な取り憑くのを越えて体の中に入ってしまう。
それで幸せな選択をしないように生かさず殺さずその人からエネルギーをもらいながら存在し続ける、といったかんじ。
色んな状況はあるだろうが、自分以外の魂が自分のエネルギーを使いながら共存してる状態のようだ。
お店の人が言うには、一般的な霊能者は外側に憑いているのは取れるが中に入っているのは取れないらしく、あの人は死神を連れているからそれが出来るという。

※死神についてはInstagramの麒麟の投稿にありますのでそちらをどうぞ。

その日は、お店の人と色んな話をして朝まで呑んだ。
翌日、二日酔いながら霊能者さんへ予約を入れようか悩んだ。
何故か胸がモヤモヤと不安感が渦巻く。
これは一体なんなのだろうか。
それからも数日悩んだ。
なんせ、もし中に入っていて取って貰うとすれば、料金もけしてお安くはない。
月々100円とかからでも良いから自己管理で支払う、という良心的なシステムならしいが、やはり悩む。が、結局悩んでいるのが馬鹿らしくなって
これも勉強!!と私は予約を入れた。
その予約の日までの間に長女は白狐の百が見えるようになり、見えない世界が一気に近くなる。
百に行って大丈夫か聞くと、毎度好きにしたら良いと返ってくる。
胸の不安感や焦りのようなものは消えない。

これ、入ってるって事かもしれない。

そう自覚すると腹が決まった。

予約の日、伝えられた場所はこの地域でお世話をしているセラピストさんのご自宅で
私は何故か手汗が止まらなかった。
入っているか尋ねると、想定通り入ってるよと返ってきた。
私の過去世の旦那さんと子供。
なんでも旦那さんと子供が旅か何かに出掛け、そのまま事故で亡くなってしまったそうだ。
二人は妻であり母である私の事が大好きで
今世で生まれ変わった私を見つけたんだそう。
中に入ったのは12年前だという。
それを聞いてすぐに思い出した。
まだ長女が保育園に通い始めたかくらいの小さい頃、昼寝の寝かしつけをしながら私も眠ってしまった。
その時、はっきりと耳元で男性の声がした。
確実に耳元で話しかけてきた感覚。
それでハッと目が覚めた。
妙に生っぽかったけれど、怖いとは思わなかった。
きっとあの時だろうと、話を聞きながら思った。
この12年、ふた家族分のお世話をしてたわけですね、大変でしたね…と伝えられた。
たしかに、朝起きた瞬間から疲れていた。
何度かどうしようもない体調不良で病院にかかるも、いつも原因は不明。
私は婦人科が弱く子供を産むのが大変で娘は二人とも大学病院で帝王切開により産まれた。
なので妊娠中からバタバタとして産後の肥立ちが良くなかったから体調がいつも悪いのだと思っていた。
まさかもうひと家族のエネルギーを賄っていたとは。
「この人、取ってくれって言わないと取ってくれないから、はっきり取ってって言ってね!」
と家主のセラピストさんの口添えに
「取って下さい!」と即答した。
私の胸の辺りから紐でも引き出すように霊能者さんはスルスルと引き抜き、私に両手を出すように言う。
するとそこに2つの魂を乗せ、これが二人の重さだと言った。
お母さんの手から返してあげてと促されるがままに私は魂をそっと手放した。
体は驚く程軽くなった。
これからは自分のエネルギーを自分の為に使えるからね、と笑顔で伝えられた。
引き抜かれる感覚、手の上の魂の感覚、解放されたような体の軽さ。
色々と会話をしつつも、私はただただその感触を感じていた。
帰りの足取りはそれまでと違っていた。
しっかりと地を踏みしめられているかんじがして嬉しかった。
行きに感じていた不安感は、中に入っていた夫と子供のものだろう。
きっと私自身の魂も離れがたかったのかもしれない。
執着という形になっていたとはいえ、愛されていたから12年もいたのだろうし愛されていたから離れたのだろう。
一歩一歩、感謝を踏みしめながら私は家に帰った。

家へ着くと長女へ「取って貰ったよ!」と私は嬉しそうに告げた。
スマホを見たまま「あー入ってたんだねー」と顔を上げ
「胸のとこに昔の旦那と子供がいたらしい…」と話す私に
「6割だね。」と長女が言った。
「え?見えるの?」
「百が言ってるー。核ってゆーか魂は取れてるけど残穢ってゆーかそーゆーのが残ってる。そのうちキレイになるんじゃない?」
と長女が言う。
「え?ちょっと待って。もしかして百は取れたの?」
戸惑った私が聞くと
「取れるらしいよ。」
!!!!!!!!!!!!!
「早く言えよぉぉぉぉ!!」
この時ばかりはなんと無慈悲な!と思ったけれど、
その後2度ほど『お話会』なるものに私と長女は参加して多くを学ぶ事となったのを思うと
百の采配は正しかったとしか言えない。



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