なめられの多い生涯を送ってきました
39歳、よくなめられてきた人生だった。特に見知らぬ人に、大いになめられる。まぁわかる。背が低く地味で童顔でシルエットは丸い。終始ヘラヘラしているし。とにかくどこを切り取っても舐められる要素しかないとは思う。歩くなめられ。そして、小型犬ほどキャンキャン鳴くとはいうが、まったくそれだな私ってば、と思う。
バーで隣に座った知らぬ男が話しかけてきたと思ったら、頭を撫ででくる。いつお前とそんなに心の距離を詰めた、と瞬間的に怒りが胃から喉元まで上がってきて、結局喉元を通り過ぎ「首から上を気安く触るな」と言ってしまい(考えたら首から下も、同じくらいか、もっと嫌なのだが、冷静さはアルコールに押し流されているので仕方ない)最終的に大人の男を演じたかった風のスーツの男から「ブス」などというバカに続くシンプル罵声二文字を引き出させてしまう。
なめる奴が悪いのか、なめさせる私が悪いのか。
こういうことが特に20代の頃は多かった。
異性に限らず、同性にだって「かわいい〜」などと言いながら、明らかに存在を軽く扱われることがある。そんな奴はいらねぇな、と隠さず態度に出すと「意外とクールだよね」などという。
勝手にこちらのキャラクターを決めつける奴が悪いのか、そう見せる私が悪いのか。
40になろうかとする今、そういうことが格段に減った。嬉しい。なんだか生きやすくなってきた気がする。歩いていると知らん奴がついてきて、ずっと何か話しかけてくるという時々起こっていた面倒な事案も今は皆無だ。居心地悪い場所も人間関係もない。まじで歳取るの悪かないな、と思う。かわい〜って言われたら全部嬉しいし。今まで人になめさせるというダサい行為を強いてしまう罠のような人間ですまんかったな、という気持ちさえある。うそ、無い。なめんなよ。