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【映画感想文】複雑なことを無視して、世界を簡単にしたくないんだ
見た映画:彼女が好きなものは
あらすじ:「普通」の見える高校生として生きる純は、ゲイであることを周りに隠して生きている。そんな彼がBL好きの紗枝と出会い、自分のセクシュアリティを隠したまま彼女と交際を始める。
自分の感情と、自分の思う「普通」が乖離していること。それでも自分が「普通」だと想像する人生を諦められないこと。複雑な感情を抱え葛藤をしながら生きる純と紗枝が人として心を通わせていく。
見たきっかけは、主人公の純を演じた神尾楓珠くんがとても好きだからだ。詳細は知らずにNetflixで神尾楓珠と検索して見つけたため、ビジュアルだけでよくある青春ラブストーリーだと考えていた。
しかしこの映画、最初の印象とは正反対であった。
一般的にマイノリティであると感じている事実に悩み、「自分はおかしい」「普通にならなくてはいけない」と苦しむ純。どんなに彼を思いどんなに理解をしたいと願っても、本当の意味で彼と苦しみを共有することはできない。
私は「普通」になるべきだと願ってしまう心や、「普通」じゃない自分は間違っているのではないかと考えてしまう心は誰もが持っているものだと思う。
世の中には正解なんてそもそも存在していなくて、誰かが決めた「普通」に勝手に縛られているだけ。「普通」だけが正しいわけなくて、全てにおいて「普通」な人なんてこの世に存在しないのだ。
誰もが自分だけが正しいわけじゃない、ということを理解して人と接する必要がある。逆に誰に何を言われても自分の正義を大切にしていい。
『複雑なことを無視して、世界を簡単にしたくないんだ』
タイトルにも引用したこの言葉は主人公である純が水族館で紗枝に言ったもの。
女性とはこうである。男性とはこうである。日本人とはこうである。大学生とはこうである。そんな風に属性で括って、人のことをわかったように語ることは簡単だ。そんな風に、それなりにわかったふりして生きることも出来なくはないし、それだってきっと間違いではない。
でもその相手が大切な人であるなら、ちゃんと向き合いたい。グルーピングしたうちの1人ではなく、その人個人をちゃんと見つめてきちんと理解したい。
普通とか、普通じゃないとか案外そんなことって関係なくて。その人がその人でいることを認めて理解したいと思い合う心が何より大切。
相談してくれたあの人のこと、私はちゃんと相手の立場で考えられていたかな。自分の気持ちや考えばかりを押し付けて、理解しようと出来ていなかったんじゃないかな。そんな風に人間関係を思い返すきっかけをくれた映画。
家族や恋人や友人のことを信じられなくなったり、心の余裕がなくて相手の気持ちに目を向けてあげられなくなったりした時にまた振り返りたい。