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松下友香/ともか|note休暇中☕️|感謝🌈✨
2024年10月31日 07:05
【プロローグ】目の前のものに太陽のような眩しい光を当てると全てが明らかとなり平面に見えるそこに影ができると立体的に見えてくる人生も憂いがある故に大切なものがはっきりして深まっていくでも影ばかりだったとしたら?人生の大切なものは欠落していく【第一話】 私の人生は影に満ちて、足りないものばかり。照らされている部分はほんの少し。恵まれない人生であることに薄
2024年11月3日 00:00
「子供食堂」の職業体験以降、図書館の自習室で時々春翔を見かけるようになった。向こうは、何か話し掛けたそうな雰囲気だった。でも「愛嬌ゼロ」を臭わせると少し淋しそうな顔をして、話し掛けてはこなかった。夏休みに、図書館でほぼ毎日受験勉強を続けたのは、集中できる上に高熱費の節約にもなるからだ。 少しだけ熱波が和らいだ八月の末に、二学期初日を迎えた。受験生にとって本番が近づいたきたことを意味していた。
2024年11月9日 07:00
私の人生で一番古い記憶は、母が泣いている姿。目を腫らし、肩をふるわせて涙していた。私はまだ小さくて、無邪気な質問をした。 当時の記憶は、まるで鮮明な写真のように脳裏に焼き付いている。リビングの焦茶色のソファに母は、うずくまっていた。まるで、子供のように、ベージュのブランケットを頭から被りながら。ソファの横には木目調のピアノがあり、当時母は、よくピアノを弾いていた。哀しげなその曲は、後にシュー
2024年11月16日 07:00
「僕が指揮者に立候補します」 春翔は真っ先に名乗り出た。教室の中が少しざわめいた。図書館で春翔に会ったとき「僕が指揮者をやって大丈夫だと思う?」そう質問されたことを思い出した。 今日から合唱コンクール練習期間なのだ。最初に、指揮者やパートリーダーを選ぶ話し合いをする。曲目は音楽の授業で話し合い、miwaさん作詞・作曲の「結」に決まっていた。『大人のために生きてるわけじゃない』という言葉で始ま
2024年11月23日 07:00
合唱コンクールを支えた四人でイルミネーションに行く約束をした。最優秀賞を受賞し達成感に包まれていた。最高の一日だった。私は早めに明日の支度をしてベッドに潜り込んだ。わくわくしてすぐには眠れなかった。 春翔ってすごい! 本気で思う。まとまりのなかった私たちのクラスをたった二週間の合唱練習を通して、強い絆で結ばれたかけがえのない仲間に変えたのだ。 休み時間も授業中も、いつも静かに一人でぽつんと
2024年11月30日 07:00
イルミネーションを一緒に見た日以降は、春翔と会う約束はしていなかった。淋しい冬休みになりそう。今度はいつ会えるのかな? 自室のベッドの上で仰向けになって小さな溜息をついた。あまりの寒さにブランケットを取ろうとした瞬間、LINEの通知音が鳴った。《凛香ちゃん、冬期講習、今日から僕も入ったよ》 嬉しい知らせに、即レスをした。今晩の塾が待ち遠しくなった。 これまで平日の夜週二回だけだった塾が、
2024年12月7日 07:00
月に一度の無料食品配付会に通っているうちに「相対的貧困」という言葉を知った。「相対的貧困」とは、うちのように、その国の水準の中で比較して大多数よりも貧しい状態のことを示す。所得がその国の中央値の半分に満たない場合が当てはまる。それに比べてアフリカには「絶対的貧困」の地区がある。その国の生活水準とは無関係に、生きる上で最低限必要なものが足りていないことを示すのだという。 私は受験勉強の合間に、
2024年12月15日 07:00
「林 凛香ちゃん、あの場では言えなかったんだけど、私が凛香ちゃんの父親の宮下 賢です」「えっ?」 状況が飲み込めずにいる私を、まず席に座るよう宮じいが促した。「会えなくなった娘を思い出しながら子供食堂を始めてね、それだけでは金銭的に厳しいから、運送の仕事もしているんだ」 小学生を相手に食事のサポートをしながら、最近は中学生が体験に来るのを楽しみにしていたところ、今年の名簿には、自分の娘と同