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今だからこそ、ゆるりと付き合えるRollei 35Sが魅力的
Rollei 35Sをお迎えしたのは、もう11年くらい前です。友人のお父さんが所有していたもので、友人が使わないので私に使って欲しいと頼まれて、期限無しでお借りしました。使ってこそお父さんが喜ぶだろう、という友人の想いです。当時、デジタルカメラのシステムに移行するべくLEICA M5などフィルムカメラを全て売り払った後でしたが、その友人の気持ちをしっかり受け止めて、改めてフィルムカメラをお迎えした次第です。
このカメラは目測式で、厳密なピント合わせができません。ゾーンフォーカスを意識してゆるりと撮るのが、このカメラのスタイルです。そのためか、ガツガツ撮るというよりも、フィルムを詰めて、時々、思いついたときに撮るという付き合い方が合っています。先日、1月初旬に詰めたKODAK ProImage 100をやっと撮り終えました。36枚を3ヶ月かけて撮ったことになります。カラーフィルムの現像は、数本ためてからラボのThe Darkroomに依頼するので、現像が上がってくるのは、さらに1ヶ月以上先になるでしょう。
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このデジタル時代、撮った写真はその場で見ることが出来るのに、撮った写真が数ヶ月先になって鑑賞できるなんて、これはロマンとしか言いようがありません。私のメインカメラはLEICA MP 0.72ですが、時々、このカメラを持ち出してスナップしています。それは、たった1枚という場合もありますし、結局、何も撮らなかったという日も多くあります。そのくらいのゆるい感じがこのカメラの最大の魅力です。フィルムも高価になりました。このように時間を贅沢に使って撮影や鑑賞を楽しめるスタイルは、今だからこそ価値があるのではないでしょうか。
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Rollei 35Sは、ハーフサイズカメラよりも小さいフルサイズカメラで、35mmフィルムの箱の高さ及び幅と同等程度というコンパクトさです。フィルムの箱、3個分よりも小さい!思いついた時に、カバンに放り込んで出かけています。
しかし、小さくてゆるいカメラだからといって侮ってはいけません。発売当時は、超高級コンパクトカメラでした。車で例えれば、ライカがフェラーリならば、このカメラはロータスといった具合でしょうか。
金属製ボディ・フルメカニカル
ゴッセン製の露出計
カールツァイス設計のレンズ(ローライ製)
デザインがクロノグラフ時計のようで格好良い
カールツァイスのライセンスを受けたローライ製のゾナー 40mm F2.8は、Rollei-HFTという独自のコーティングが施されたという高級レンズです。とても小さなボディながら、信じられないほどハイクオリティな描写をしてくれます。小型で40mmという画角が、ストリートスナップに最適です。
意外なことに、ネガフィルムならば内蔵露出計は頼っても問題ない正確さです。目測を誤ってピンボケになっても、露出を大きく外した経験はありません。もっとも、ピンボケも良い味です。iPhoneでピンボケ写真を作るのは至難の業でしょう。また、フィルム巻き上げレバーは一般的なフィルムカメラと逆位置ですが、あまり気になりません。
一方、金属製ボディは素晴らしいのですが、薄い金属ボディなので、扱いは気をつけなければなりません。ぶつけると、すぐに凹んでしまうでしょう。ただ、凹んでいるのも愛嬌となるのも、このカメラの良いところです。細かいことは気にしてはいけません。シャッターフィーリングは、さすがにライカのような上質なものではありませんが、メカニカルカメラの醍醐味を十分に味わえます。また、逆光耐性はイマイチですが、それこそオールドレンズ的な味わいを楽しめると言えます。今ではむしろポジティブですね。
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今度は、大好きなカラーフィルムCineStill 400Dを装填しました。これも3ヶ月くらいかけて撮ることになるでしょう。この紫のフィルムがRollei 35Sに入っていると思うだけでテンションが上がります。CineStill 400Dは、カラーフィルムの中では高価な部類ですが、それを3ヶ月くらいかけて楽しめるならば、安いかもしれませんね。
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