次の現像液を検討 1ロールあたりのコストを試算してみた (修正:T-MAXで間違い)
今年に入りステイホームを生かして自家現像を始めました。最初は、初心者でも運用が楽なCineStill Film DF96 Monobath(液体タイプ)を購入して使っています。CineStill Film DF96 Monobathは、現像液、停止液、定着液が一体になった革命的な製品です。これまで、問題なく使えており大変満足しています。時々、現像ムラがありますが、これは現像液のせいではなく、私の腕の問題だと思います。
現像可能本数が16ロールで、すでに12ロールを現像したので、そろそろ次の現像液を考えなければなりません。
CineStill Film DF96 Monobath 液体タイプの価格が$24.99で1ロールあたり$1.56と少し高いです。それでも、ラボの現像料金$8(+送料)と比較すれば大幅なコストダウンになっています。さらにコストダウンをするには粉末タイプのCineStill Film DF96 Monobathがあります。希釈する必要があり一手間かかりますが、1ロールあたり$1.06とコストが下がります。
折角なので、CineStill Film DF96 Monobathに限らず、様々な現像液を調査してみることにしました。現像液毎に特徴もあるので、それを知りたいという気持ちもあります。ただ、調べてみると現像液は数多くあるので、まずはベーシックなタイプを選んで、B&Hの価格から1ロールあたりのコストを試算しました。初心者なので、解釈が間違っている可能性もあるので、そこはご容赦下さい。
<計算基準>
1ロール:35mm 36枚
1ロールの現像に必要な現像液:300ml(PATERSONタンク基準)
CineStill Film DF96 Monobath (粉末タイプ 現像液量:1,000ml)
特徴:停止液、定着液の必要がなく、一回で作業か完了できる革命的な現像液。
一回使用毎に15秒追加というのも分かりやすくて便利。
B&H価格:$16.99
開封後保存期間:2ヶ月(16ロールまで)
再利用タイプ
1ロールあたりのコスト:$1.06
Kodak Professional D-76 Film Developer (粉末タイプ 現像液量:1gal)
特徴:長い歴史のあるモノクロフィルム現像剤で、高いシャドウディテール、通常のコントラストに加えて、細かい粒状感を実現。そのまま使用することも、1:1に希釈して使用することも可能。フォグが少なく、長い階調を作り出すことができるため、プッシュ処理にも適している。非推奨だが、粉末を4分割にして使っている人も見かける。
B&H価格:$9.95
<再利用で使用>
現像液希液:1gal
現像可能本数:16ロール(各バッチ現像した後に補充液を加えると120ロールが可能)
開封後保存期間:充満状態で完全に密栓をした場合6ヶ月
1ロールあたりのコスト:$0.62($0.08+補充液のコスト)
現像時間の補正:原液で使用する場合、1L当り1本処理するごとに15%時間を延長。または、1ガロン(3.8L)当りロール4本現像処理した後は、15%ずつ現像時間を延長。補充液を使用する場合には、現像時間を延長しない。
<ワンショットで使用>
特徴:時間管理を一定にセットできるのと、いつも新液を使うことが可能。
現像液希液:1:1
現像可能本数:25ロール
1ロールあたりのコスト:$0.40
Kodak Professional HC-110 Film Developer 1L (現像液量:32,000ml)
特徴:ワンショットで使用し、使用後は毎回廃棄するか、HC-110補充剤と組み合わせて再利用することが可能。適度な細粒度、シャドーディテールが充実していること、濃度スケールが長いこと、現像ラチチュードが広いこと、フィルムスピードを落とさないことなどが挙げられる。また、プッシュプロセスでの使用にも適している。希釈率によって性能が変わり、現像時間を短くしたり、また、D-76と似た特性の現像もできる。
B&H価格:$34.99
現像液希液:1:31(B希釈 現像液量:32,000ml)
現像可能本数:160本(1000ml当り:B希釈で5ロール)
1ロールあたりのコスト:$0.22
開封後保存期間:完全に密閉されたボトルに入れて6ヶ月間
ワンショット
店頭販売のみ(宅配便NG)
Kodak Professional T-MAX Film Developer (濃縮液体タイプ 現像液量:5,000ml)
特徴:独自のT-GRAIN乳剤を採用した高速パンクロマチック白黒ネガフィルムで、非常に微細な粒状構造と高いシャープネス、エッジディテールを実現。ISO400から、EI1600までの広い露光範囲を持っている。濃縮液から都度必要な量だけ使えるのか無駄がなく便利。ワンショットなので、時間管理を一定にセットできるのと、いつも新液を使うことが可能。コスト的にアドバンテージはないが、2回程度なら再利用可能らしい。そうなると、1本あたりのコストは$0.58となる。場合によっては、もっと再利用している例もある。さらに、未使用液を普通に保存しても長持ちするらしい。
B&H価格:$18.50
希釈:1:4 (必要な量のみ溶解可能)
現像可能本数:63ロール
1ロールあたりのコスト: $0.29
開封後保存期間:未使用液は、充満状態で完全に密栓をしたビンの場合6ヶ月
現像時間の補正:1ガロンを基準にすると16ロールまで→標準時間 32 ロールまで→標準時間+1分 48ロールまで→標準時間+2分
ILFORD ID-11 (粉末タイプ 現像液量:1,000ml/5,000ml/)
特徴:業界標準の粉体現像剤として広く認知されている。幅広い用途の写真撮影に適したフィルム現像剤は、細かい粒度、シャープネス、色調の再現性がある。
B&H価格:$9.64/$19.99
現像可能本数:10ロール/50ロール
1ロールあたりのコスト:$0.94/$0.34
開封後保存期間:完全に密閉されたボトルに入れて6ヶ月間
現像時間の補正:1回現像毎に10%の時間を増やす。
ILFOTEC HC 1-liter (濃縮液体タイプ 現像液量:128,000ml)
特徴:すべての白黒フィルムに適した経済的で汎用性の高い液体現像剤。様々な条件下で高品質でシャープな結果を確実に生み出す。
B&H価格:$72.05
保存液希液:1:3 (4lの保存液を作成する)
現像液希液:1:31(128lの現像液が作成できる)
現像可能本数:426ロール (300ml 1本で計算)
1ロールあたりのコスト:$0.17
開封後保存期間:完全に密閉されたボトルに入れて6ヶ月間
現像時間の補正:1回現像毎に10%の時間を増やす。
ワンショット
備考:原液から希釈しているYouTuberがいた。
ILFOTEC DD-X (濃縮液体タイプ 現像液量:5,000ml)
特徴:シャドーの深み、中間調への滑らかなグラデーション、明るい詳細なハイライトなど、色調の全範囲をカバー。すべてのILFORDフィルム、特にILFORD DELTA PROFESSIONALフィルムの機能を補完するように設計。
B&H価格:$21.95
現像液希液:1:4 (5,000mlの現像液が作成できる)
現像可能本数:再利用する場合50ロール(1lあたりフィルム10ロール現像可能。ただし再利用する場合は24時間以内)
ワンショットの場合16ロール(1ロールにつき原液60ml+水240mlで計算)
1ロールあたりのコスト:$0.44(再利用)$1.37(ワンショット)
開封後保存期間:完全に密閉されたボトルに入れて24ヶ月間
現像時間の補正:1回現像毎に10%の時間を増やす。
Adox Adonal Developer (濃縮液体タイプ 現像液量:500ml)
特徴:ロジナール現像液で最古の現像液。ワンショットタイプでは最も安価。濃縮液から都度必要な量だけ使えるのか無駄がなく便利。ワンショットなので、時間管理を一定にセットできる。
B&H価格:$11.49
現像液希液:1:50 (300ml=5.9ml:295ml)
1ロールあたりのコスト:$0.17(約84ロール)
開封後保存期間:長期間らしい
ワンショット
店頭販売のみ(宅配便NG)
1ロールあたりのコストのまとめ
The Darkroom(ラボ) : $8+$5.95(送料)=$13.95
CineStill Film DF96 Monobath 液体タイプ: $1.56(現在使用)
CineStill Film DF96 Monobath 粉末タイプ: $1.06
Kodak D-76 : $0.62 ($0.40 1:1)
Kodak HC-110 : $0.22
Kodak T-MAX : $0.29
ILFORD ID-11 : $0.94(1L)/$0.34(5L)
ILFOTEC HC : $0.17
ILFOTEC DD-X : $0.44
Adox Adonal : $0.17
この調査結果から、コストオリエンテッドなのは、Kodak HC-110、ILFOTEC HC、およびAdox Adonal(ロジナール)です。しかし、Kodak HC-110とAdox Adonalは、宅配便がNGで店頭販売のみです。両方とも液体タイプで運用が楽なのですが、残念ながら選択肢から外れます。
ILFOTEC HCは、とても魅力的です。何たって大量426ロールを時間管理が一定のワンショットで運用できます。しかし、保存液の有効期間が半年なので、その間に426ロールも撮影するのは不可能です。1週間に2ロールが限界なので、最大でも半年で48ロールになります。そうなると、使わずに殆ど破棄されてしまいます。実質のコストが$1.5/1ロールとなり、定着液を入れるとCineStill Film DF96 Monobathとほぼ同等になります。これでは意味がありません。
定番のKodak D-76の1:1希釈も魅力的です。ワンショットで半年以内に25ロールなので、これならば無駄なく使えます。D-76が面倒なのは、保存液を作成して、現像するときにもう1回1:1で希釈することです。ちなみに、補充液を使えば、120ロールまで現像できるらしいのですが、具体的な運用を理解できず初心者には難しそうなので今回は無視します。
Kodak T-MAXでは、色々と計算ミスがありました。結果的には$0.29とリーズナブルな価格です。しかも、必要な量のみ溶解可能で保存期間の6ヶ月を超えても原液は問題なさそうです。ざっくりと1,000mmlの現像液をつくって、4ロールまで標準時間、5から8ロールまで標準時間+1分、9から12ロールまで標準時間+2分として12ロール現像したら破棄。それを5回繰り返せば60ロールとなり、ほぼ現像可能な63ロールに近づきます。
ILFORD ID-11 5Lは、保存液を保管する場所をとるのであまり望ましく無いです。一方、ILFOTEC DD-Xは良いですね。再利用タイプですが、運用はそんなに難しくない印象です。保存期間も24ヶ月と長いです。ILFORD HP5 PLUSを愛用しているので、同じブランドなので相性も良さそうです。
いろいろ調べてみると、メーカーが推奨するレシピではなく、家庭の味噌汁のように、それぞれ独自のレシピで運用している人が多いように感じます。それぞれ満足する結果になっていることから、経験の無い私が今の段階で何が正解というのを決めるのは難しく感じています。とりあえず、以下のように理想像を挙げて、それに近しい現像液から試していきたいと思います。
理想な現像液
1)1ヶ月8ロールというペースで、無駄なく使える保存期限の製品。
2)時間管理が楽なワンショット。
3)希釈は保存液を作成せず現像時に1回のみが望ましい。
4)1ロールあたりのコストが$0.50以下。
Kodak Professional HC-110とAdox Adonal Developer が条件に合致していますが、宅急便で入手できないのが本当に残念です。田舎なので、周囲に現像液を売っているお店がありません。現時点では、ILFOTEC DD-Xが最も理想に近いです。
「Kodak HC-110 Vs Rodinal Vs Ilfotec DD-X」の動画を発見しました。Tri-Xを使っての比較で、それぞれの特徴が出ていてとても参考になりました。それによると、ILFOTEC DD-XとKodak HC-110はかなり近い印象でした。若干Kodak HC-110の方がコントラストが強く、ILFOTEC DD-Xは階調が豊かに感じました。
定着液はTF-4 ARCHIVAL RAPID FIXERにしようと思っています。この定着液は、停止液には水を使用することと指示しています。運用も楽そうです。
<定着液>
TF-4 ARCHIVAL RAPID FIXER 1 liter (濃縮液体タイプ 最終現像液量:1gal)
特徴:停止液の必要はなく水で良い。また、非常に早く仕上げる。少しアンモニア臭がするらしい。
B&H価格:$13.95
定着可能本数:76ロール(For film the capacity is 15-20 rolls of film per liter of working solution.)
1本あたりのコスト:$0.18
希釈:1:3
開封後保存期間:1年
再利用タイプ
長尺フィルム導入により、フィルム1ロールのコストが$4.44(ILFORD HP5 PLUS)なので、KODAK T-MAXとTF-4 ARCHIVAL RAPID FIXERのコストを加えると、トータルのランニングコストは、$4.44(ILFORD HP5 PLUS 36枚)+$0.29(T-MAX)+$0.18(TF-4)=$4.91となります。
もう少し悩んで決定しようと思います。
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