自分が抱える病気について。
多くの人に隠してきたことがある。
それは自分の病気についてだ。生まれつき腎臓が悪い(正確に言うと、人の半分ぐらいしか動いていない)というのは、ある程度仲が良い人には言っている。しかし、それ以外にも小さい頃から患っている病気がある。
それは「多発性陰嚢粉瘤症」という病気だ。すごく簡単に言えば、キンタマに白いぶつぶつのようなものがたくさんできている。良性腫瘍だから、感染もしないし、放置していても問題ない。でも、腫瘍のある場所が場所なだけに、「性病」と勘違いされる可能性もある。それにいざというときに異性から引かれてしまう恐れもある。いまでもコンプレックスのひとつである。
手術はいままでに2回行った。初めて彼女ができた大学2回生のころと先日別れた元カノと付き合い出したころだ。手術によって、大きく膨れた腫瘍は取り除けたものの、小さく目立たないものは放置されたままだ。何が原因でできるものなのか、腫瘍が新しくできることはあるのか、腫瘍は大きくなるのか小さくなるのか、詳しいことはお医者さんでもわからないらしい。体質としか言いようがなく、今後もずっと付き合っていく必要がある病気だ。
自分のキンタマに異物ができているのに初めて気づいたのは、たしか小学5年生ぐらいだった。お風呂に入っているときに、なにか変なものができているなと気づいた。当時、足の裏にウイルス性のイボが大量にできていたこともあって、「その類のものかもしれない。いやでも、こんなとろこにはうつらないだろう。まぁでも、痛くないし、そんなに目立たないし、大丈夫か」。そんなふうに自分を納得させて、放っておいた。本当は親に相談すればよかったのだけれど、思春期だったし、母子家庭だったこともあって、母に相談するのは恥ずかしかった。(いまでも言えていない)
それからしばらくは大きくもならず、大量にできることもなく、目立たない感じだったと思う。しかし、次第に大きくなるものが出てきたり、数が増えてきたりした。学校では友達が友達をイジるときに「性病」という言葉を使うこともあり、「あれ、自分は本当に性病かも……」なんてドキッとした。でも誰ともセックスなんてしたことがないし、キスすらしたことがない。異性と付き合ったこともない。「それなのに性病になんてなるの?」 と不思議でたまらなかった。誰にも相談できず、一人で抱え込んで、不安でいっぱいだったのを覚えている。周りの友達が童貞を捨てる中、「自分はこの病気を治してからじゃないとセックスなんてできない」と思い込んでいた。
地元を離れ、和歌山県の大学に入学し、一人暮らしを始めた。ここでなら、親にも友達にもバレずに手術ができる。7年間抱え込んでいた悩みをやっと解消できると思った。ただ自分はすごく臆病だから、なかなか病院に行くことができなかった。「もしかしたら悪性の腫瘍かもしれない。キンタマを取り除くことになったらどうしよう。怖い。痛くも、痒くもないし、他に悪影響もないし、もう少し様子を見よう」また自分を納得させて、大学2年生になるまで病院には行かなかった。
先述した通り、人生で初めての彼女ができたことをきっかけに、病院へ行った。そこで初めて「多発性陰嚢粉瘤症」という病名を教えてもらう。
「良性腫瘍であり、放っておいても問題はない。ただ見た目の問題もあるので取り除いておいたほうがいい。今日で全部を取ることは難しいし、今後も新しくできたり、小さいものが大きくなることもある。ずっと付き合っていかないといけない」
病院の先生は慣れた口調でペラペラと説明をし、「じゃあ手術しますよ」とランチにでも行こうよみたいな感じで言った。「え! 今すぐするの?」とびっくりした。
突然ですが、キンタマに注射をされたことがありますか? ないですよね。
麻酔の注射がとにかく痛い。キンタマが身体についていらっしゃる方なら、なんとなく想像できるかもしれないが、想像の3倍ぐらい痛い。1回ならまだしも、腫瘍ができている箇所に何度も打つ。これが耐え難い。
ただそれさえ耐え凌げば、手術はあっと間に終わる。30分もかかっていなかったと思う。「終わりましたよ」と声をかけられ、見たくもない摘出したブツを見せられる。これは記憶違いかもしれないが、「持って帰りますか?」と聞かれたような気がする。いや、いりません、丁重にお断りします。
さて、なんでこんな記事を突然書いたかと言えば、特に理由はない。書きたくなったから書いてみた。パンツやズボンにいつも覆われているキンタマを人に見せることなんて滅多にない(モテないからというのもある)のだから、わざわざ公開する必要なんてないのだが。
ただ強いて言うなら、なんか隠しておくのがもったいない気がした。
お医者さんの話では、珍しい病気ではないそうだ。けれども、いままでに同じ病気で苦しんでいる人には出会ったことがない。出会っていたかもしれないが、みんなきっと隠していたと思う。(パンツやズボン履いているからね)じゃあ、なんかこういう場に公開しておいたら仲間が見つかるかも……なんて思ったりしたのかな。
伝えたいのは、不格好なキンタマだったとしても、愛してくれる人がいるよということ。いや、なんかこう書くと誤解されそうだが。
病気についてきちんと話を聴いてくれ、理解を示して、自分のことを愛してくれる人は絶対にいる。
この病気を抱えていると、銭湯に行くのを憚るかもしれないし、異性と付き合うことに不安を覚えるかもしれない。それに誰にも相談できずに悩んでいる人もいるかもしれない。ぼくもそうだった。でも本当に信頼できる人に出会うと、銭湯にも気軽にいけたし、異性とも普通に付き合えた。(病気のことは話したり、話さなかったり、嘘をついたりもしたけど)
大丈夫だよ。そう言いたかっただけだ。
(もちろんお医者さんには行くんだよ!)
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