15年住んでも 私はまだアメリカを知らない。
先日面白い人に会ってきた。
今年からうちを担当してくれた会計士のJ。「両親は韓国人なんだ」という彼はアメリカで生まれ(なのでJはアメリカ国籍)、お父さんの仕事で8歳のときに韓国に帰って、大学卒業してから香港にある巨大米企業に就職、その後にアメリカに来て働き始めたと聞いていた。
アメリカに戻ってきたのはご家族と?と尋ねたらちょっともごもごっとして「一人で。大体戻ったのはあんまり良い理由じゃないし良い時期でもなかったんだ」という。
どうやら香港で勤めていた会社は、2007−2008年に金融クライシスを起こした「サブプライムローン」をメインで扱う(売っていた)投資会社、そう、かのリーマン・ブラザーズ・ホールディングだったらしい。けれどそのとんでもない金融商品がうまれた状況なんかを理解したのは、気付いたら会社が潰れリストラされたような形になったあとだったらしい。
そこでJは働いて貯めたお金を持って、アメリカの大学で「ドクター(博士号)」を取るつもりで渡米したんだそうだ。(他でも書いているが、アメリカの大学・大学院は年間300万円とかかかる。ここに生活費やらなんやらいれたら、ある程度の貯金額がないと無理だ。)
入学する大学が決まった直後に、友人に誘われてラス・ベガスへ。
友人と散々飲んで、勢いでギャンブルをした。ギャンブルなんてやったこともなかったし興味もなかったJだったが、その状況だったからか、とにかく文字通りすっからかんになったのだそうだ。もう大学にもいけない。(話からすると、1千万円以上という感じですったらしい。)
「なんで酔っていたからといっても、あんな賭け事にのめり込んだんだろうな」自嘲的に話すJはしばらく「まぁ、世で言う負け犬だったよね」と。
でもこのまま社会の底辺に落ちていくわけにはいかない。Jは自分の持っていた知識と資格で公認会計士助手、やがて公認会計士として働き始め、そのうち今の会計事務所に勤めることになって ユタ州にやってきたのだそうだ。10年のうちにこの「まともな」生活に戻ってくることが出来てよかったよ、という。
正直、かなりびっくりした。
いくら資格をもっていたとしても、もともと金融経済のほうが専門だったとしても、アメリカの社会で一度Loser(ルーザー・負け犬)と呼ばれるところに落ちると ここはなかなか這い上がれない仕組みなのだ。真面目に働こうとしても社会が受け入れてくれなかったり、変なところで「先立つお金」が要求され、上がっていけない。そういう、厳しい国なのだ。
実際、トランプ大統領がうまれたのは、そういう底辺からあがれない人達がサポートしたから、と言われている。
どんな人にも人生のなかで「上手く行かない」あるいはその人なりに「ドン底」というところを通っていくものだと思う。それが人間関係なのかお金のことなのか家族か、はたまた自分自身だけのことなのか、いろいろだけど。
私は幸い、お金でそんなアップダウンを見たことはない。だから本当の意味でJがどんな世界を見てきたかは知らない。
やり直せた彼には、何が支えだったのだろう。今左うちわで暮らしているわけではないけれど、人並み(よりはイイ感じで)に暮らせているという時点で、一応アメリカン・ドリームは叶えた人と言って良いのだろうな。
この国で ものすごいアップダウンを実際に経験した人と話すとは思っていなかった。私の知らないアメリカはまだまだ、その辺に沢山転がっているのだろうな。
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下書きに眠ってました・・・・下書き、50以上ある。なんとかしよう。
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