男性フェミニストにできること

はじめに

こんにちは。男性フェミニストを自負すると申します。

女性に対する構造的な差別、理不尽な取り扱い、不当な人権の侵害。
これらは、中絶の配偶者同意や賃金格差、入試における不当な減点措置といった形で、今なお色濃く残存し、罷り通っています。
女性だからという理由だけで、人権が蹂躙されているのです。

基本的人権の尊重に照らし合わせて、

あまりにも理不尽で凄惨すぎる!これでいて何が「基本的人権の尊重」を謳った民主国家だ!

との怒りから、今年に入りフェミニストを自負するようになりました。

しかし男性である僕は、女性として、当事者として女性差別によって直接的に痛めつけられた経験をしていません。
それゆえ、女性の境遇や立場、訴えを正確に自分の実感を伴って理解出来ているとは言いがたいのです。
にもかかわらず、安易に女性の問題に介入すると「他人の領域にズケズケ入って荒らす集団」になりかねません。

そしてそれが実際に起きたのが、女性向け吸水ショーツを男性が中心となって開発したことによる問題でした。

このツイートの画像は、株式会社アサクラが、OLTERというブランドで売り出した「女性向け吸水ショーツ」です。

ところが、この画像はあまりにも非現実的です。
なぜかというと、生理中はお腹回りが冷えるため、このような姿勢を取ると痛みが悪化しかねないのです。
生理ショーツという専ら女性のための製品にもかかわらず、わざわざ #生理あるある というハッシュタグをつけるなど、生理を経験したことのない者が想像した「生理中」を描いており、実態に即していないとの意見が集まり、Twitterなどでかなりの批判を受けました。

実際に開発チームも全員が男性であることがわかっています。

さらに、マーケティング手法においても女性目線が欠けているとの批判が数多くありました。

このように、オフィシャルな広告においても明らかに「男性目線」による描かれ方がなされています。

おそらくブルーオーシャン市場を求めて参入したものと思われ、あまりにもマンスプレイニング(男性が女性に対して、相手が無知だと決めつけ、見下した態度で説明をする行為)が行き過ぎているとの批判を受けました。

海外でも、ドイツにおいて男性が開発した生理用品について、「生理=汚い」とするスティグマを助長するとの批判や、生理に対するマンスプレイニングであるとの批判が相次ぎ、開発者が謝罪しています。

生理は、身体男性は自分の身で体験し得ないことです。たとえ見聞したとしても、限界があります。

もしかすると、開発者の男性は「良かれ」という心があったのかもしれません。ただし、百歩譲っても自らの女性に対する無意識の偏見についてメタ認知し、表現に注意する必要があったのではないでしょうか。

これらの事例から、男性が安易に女性にしか体験し得ない問題に介入することはマンスプレイニングに繋がる可能性があり、逆に女性差別を助長しかねないと危惧しています。

では、男性フェミニストはどのように女性差別に向き合えば良いのでしょうか。

男性フェミニストだからこそ出来ることは?

※価値観のアップデートや基本的人権の尊重は大前提とします

個人的に思うには、男性フェミニストだからこそ出来ることは「同じ男性に対するアプローチ」であると考えます。
具体的には、情報発信や啓蒙活動、アンチフェミからの防波堤となることです。

なぜかというと、男性の視点として、男性に言われるのと女性に言われるのでは違う印象を持つ人が多いと思われるためです。

同じことでも女性が言うと、「どうせ女だろ」と見くびられる。
かたや男性が言うと、聞き入れられる。

こういった経験をお持ちの方は少なくないかと思います。
実際にこのようなケースがあったようです。

つまり、女性だからと舐めてかかる男性が一定数いるのです。
だからこそ、屈強な印象を持たれやすい男性が言う方が効果があるといえます。

アンチフェミな方々は、声を上げた人の性別を問わずフェミニズムの意見を誹謗してくると思いますが、それでも「専ら女性が声を上げている」のと「男性も声を上げている」のでは、後者の方が効果は大きいと思うのです。
これは一種の「長いものには巻かれろ」的な心理ですが、男性もフェミニズムを推進しているとなると、自らの考えに揺らぎが生じるのではないでしょうか。

これまでは女性が推進していたから他人事だったけれども、男性も推進しているとなると「人権問題」として考える余地が生まれるかもしれない。
このように、女性差別に対して無関心な層を取り込む上で効果が期待できる。そう僕は考えます。

それ以外の効果もあります。
男性であるからこそ、よく言われる「男性の生きづらさ」男性心理についても理解できる人が多いと思われるためです。
これは、男性を啓蒙する上で強力な武器となり得ます。

なぜか。

男性視点に立って啓蒙できるためです。
例示してみます。

年収が低く、雇用形態も非正規であるためルックスの割に女性からモテず、所謂「非モテ」を拗らせ、屈折した男性Aを仮定します。
男性Aは、自分がモテないのを「女性が下方婚せず高望みするからだ」と考えています。

ですが、根本的な原因は「男性に収入を求めざるを得ない社会構造」および「女性を得て一人前とみなすような男性社会の価値観」にあるのです。

マジョリティ層に共有される価値観のみならず、法制度や雇用慣行に至るまでが旧態依然とした「男は仕事、女は家庭」を想定したものなのです。
少しずつ改正されているとはいえ、現在でも色濃く残っています。

女性の視点から見てみましょう。
女性からすると、

男性並みに一生懸命働いても給料が上がらない→生活が苦しい→苦しい生活から抜け出すために結婚が必要→相手に収入を求めざるを得ない

という図式が成り立ちます。
滅私奉公しないと昇進できないことによる賃金格差構造とそれを有する日本型雇用慣行を温存してきた勢力が根本的原因なのです。
女性はこれによる被害者です。

この事象は、一見すると女性が男性を年収で品定めしているように感じられるかもしれません。
ですが、これは極端に言えば「生きていくためにやむを得ず」という側面がほぼほぼだと考えます。

現状では、女性は結婚しない選択を取ろうにも男性に比べて市民権を得ていませんし、子供を産む上ではタイムリミットもあります。
ましてや一度レールから外れるとやり直しが困難な日本型雇用慣行では、育児のために会社を辞めると非正規雇用で働かざるを得ないケースが多いです。

つまり、男性が男性のために作り上げてきた雇用慣行が、女性から稼ぐ機会を奪い、配偶者候補たる男性に収入を求めざるを得なくさせているのです。

もう一つの観点として、「なぜ男性が恋愛し、結婚したいと思うのか?」という点に着目します。

子供が欲しい、家庭を持ちたい、一人だと寂しいから...等々様々な理由があると思いますが、これら各々について「なぜそう思うのか?」を掘り下げていくと「男性として一人前になり、社会に認めてもらうため」というものが少なくないのではないでしょうか。

実際問題として、既婚者で妻子がいること=本人の人格に問題がないこと(他人から認められたこと)の証明であると考える人もおり、逆に未婚でいると昇進において不利な扱いをされたケースもあったようです。

ですが、こうした価値観は徐々に衰退しつつありますし、何より相手個人と向き合っていません。
とどのつまり、根本的には「"恋愛や結婚は素晴らしいことだ"(そうしないなんて一人前じゃない)とするホモソーシャルの価値観を知らず知らずのうちに刷り込まれた」ことが原因だと考えます。

なぜかというと、国家を維持する上では人口維持が必要不可欠だからです。
そのため、人口維持を図るべく国民に子孫を残してもらいたいのです。
だからこそ、結婚とそれに繋がる恋愛の素晴らしさと社会的ステータスとしての側面を殊更に強調する価値観が維持されていると考えます。

幼い頃から教育や周囲の大人等によってこの価値観を知らされ、影響され、刷り込まれていくことで、次第に自分の本心と同一化していきます。
そうして恋愛や結婚ができればまだしも、できないとこのように拗らせていくものと思われます。価値観から抜け出せない限り。
いわば洗脳されているのです。

ですが、男性であるからこそ「モテないことが辛い」という視点は理解できますし、僕も現にこれで悩んでいた過去があります。
10年近くにわたりもがいてきましたが、ジェンダー問題を知るにつれ「ホモソーシャルの価値観を刷り込まれていたからだったな」と理解することができました。

急がば回れではありますが、根本的な解決策は(某アカウントが言うような)「女性を啓蒙して女性を低スペ男性に向かわせる」ではなく、「常識として刷り込まれた自分の中のホモソーシャルの価値観を疑い、メタ認知して、そこから降りる」であると考えます。

そして、それを理解してもらうためには、「自らを苦しめているのは女性ではなく、男性が維持してきた"モテや結婚は素晴らしいし、それができないと男ではない"とする価値観である」と繰り返し解き、少しずつ自らの常識を疑うように誘導する必要があります(あくまでも一例です。具体的な方法についてはまだ検討段階であり、試行錯誤中です)。

男性は世の中の人口の半数を占めているのみならず、役職者や意思決定層においてはより多くの割合を占めています。
男性の賛同を取り付ければ、女性に対する構造的差別の解消に向けた動きはより速やかに、より効果的なものとなるでしょう。

ですが、現状ではまだまだ理解のある男性は少ないです。
言い換えれば、改善の余地がいっぱいあるのです。
僕も、少しずつではありますがSNSにおける情報発信や啓蒙活動、アンチからの防波堤としての活動に取り組んでいます。

以上のことから、男性フェミニストは男性に対して効果的かつ気持ちを汲む形でアプローチできることが強みであり、かつそれが重要なミッションであると考えます。

フェミニズムの主役は女性です。男性フェミニストは女性差別に対する理解・共感と差別構造のメタ認知を前提とした上で、後方支援と男性に対する広報に徹することで、最大の効果を発揮できる。

僕はそう考え、取り組んでいます。
これを見て協力してくださる方がいらっしゃれば、とても嬉しいです。

長文でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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